戦後・被爆80年となる今年は、8月号と12月号の2回にわたって「平和教育」を特集します。8月号では、「実相を学び、その時代を生きた先人たちの記憶を継承すること」に軸足を置きました。
私たちが戦争体験者から直接話を聞くことができる時間は残り少なくなりました。それは寂しいことでもあると同時に、80年間日本では一人も「戦争体験者」を出してこなかったという、ポジティブな事実でもあります。日本が戦争をしない・させない「抑止力」になったのは日本国憲法と、「教え子を再び戦場に送るな」とのスローガンを掲げた教職員の奮闘も含めた、市民の平和運動だと私たちは考えます。政府が戦争できる国へ舵を切ろうとするたびに市民が声を上げつづけてきたことと、戦争体験者や戦争遺跡などの地域の戦争の歴史を掘り起こし、子どもたちの実態に合わせてくり返しおこなわれてきた各地の平和教育の実践は、平和を推進する車の両輪です。
一方、教科書検定による政府見解のおしつけや「政治的中立性」を強調する教育政策等により、平和教育の実践はやりにくさを増しています。戦争の歴史や実相を知らない若者の増加は、戦争する国づくりを勢いづけることになりかねません。
今特集が、今一度、戦争の加害・被害の実相に向き合い、互いの平和への思いを理解しようと努力するみなさんを勇気づけるものとなることを願っています。