『クレスコ』

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クレスコ

〈2024年4月号 3月20日発行〉

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【意見】全教が「高校実質無償化」で文科省に意見表明! 「高等学校実質無償化」に関する関係団体との意見交換会

 全教は、文科省から「高等学校実質無償化」に関する意見を求められたことに応じ、今谷賢二全教教文局長らが文科省主催の関係団体との意見交換会に出席。「高校教育の無償化に向けた検討が開始されることを心から歓迎する」と発言し、①高校授業料等の扱いについて、②特に、私立学校における授業料など学校納付金にかかわって、③高校教育にかかわる費用負担、給付製奨学金にかかわって、④高校への希望者全員入学への移行などについて意見を述べました。


写真:あいさつする川端文科大臣


 この会合には、杉浦洋一全教副委員長、小池由美子日高教副委員長、小村英一全国私教連委員長が同行しました。

 会議は午前中を第1部、午後を第2部として開催。全国知事会など地方団体や、全国高等学校長協会・日本PTA全国協議会など教育関係団体、教職員組合を対象に22団体の意見を聞いたもので、川端達夫文科大臣が出席(途中退席)したもとで開催されました。

■ 総理からしっかりやるように言われている――川端文科大臣 
 
 午後から開かれた第2部の会議冒頭、川端文科大臣はあいさつで「鳩山内閣発足以来、選挙においての国民との約束であるマニフェストの中心テーマの一つであり、総理からもしっかりやるように言われている項目の一つが『高校教育の実質無償化』だ(私立高校においても、助成を確保しようと約束した)」と述べ、「教育をしっかりさせることは国にとってきわめて重要な課題だ。高校教育を中心として、『社会が人を育てる』との観点で、高校教育を『望む人に対しては国が責任を持つべきだ』という理念のもとにこの政策を立てた。それぞれの立場で忌憚のない意見を聞きたい」と高校無償化の実現への構えを示しました。
 
■ すべての高校生を対象に教育費無償を原則とすることが必要――今谷全教教文局長 
 
 全教の今谷教文局長は、「高校教育の無償化にむけた検討が開始されることを心から歓迎する」と発言。そのうえで、新しい制度の設計にあたっては、「教育を受ける権利を規定する憲法第26条の理念を踏まえ、教育の機会均等を実質的に保障する制度とすることが必要」と述べ、「それは同時に、国民の声に正面から応えることだ」と指摘。続けて、「97%を超える生徒が高校に進学している現実を踏まえた制度設計が求められており、このことは、すべての若者が自立して社会生活を送るうえできわめて重要な意味を持ち、将来の日本社会を考えるうえでも大きな意義を持っている」、そのための「制度設計の基本は、国・公立、私学など学校設置者を問わず、すべての高校生を対象にした教育費無償を原則とすることが必要だ」と強調しました。
 
 また無償化の方法について、「個人給付などのやり方ではなく、手続きの煩雑さや余分な経費負担を避けるためにも『授業料の徴収そのものをやめる』形での無償化とすることが重要。また、今回の検討にあたっては、私学教育が日本の教育に果たしてきた役割と私学に通う生徒・保護者のおかれている現状を考慮することも求めたい。公教育の一翼を担う私学には、高校生の約3割が在籍しており、公立との格差を拡大する方向での制度検討は懸念される」との意見を述べました。
 
 加えて、「仮に授業料部分の無償化が実現したとしても、高校生の教育にかかわる家計負担は、依然として深刻だ」として、「給付制奨学金の創設など今日の社会状況を踏まえた保護者支援の方策の検討」を求めました。
 
■ とにかく国が財源を負担する形でやっていきたい――高井政務官 
 
 高校実質無償化への賛意の意見が大勢を占めた会合の最後に高井美穂政務官は、「今日の意見は、今後の政策に活かしていきたい」と発言し、関係団体からの意見に概ね次のように述べました。
 
 意見の多かった給付方法について、「世帯または高校生本人に対し、助成金の受給権を創設・付与するということを原則に、学校設置者などが世帯の受給権を代理行使し、受領できるスキームをつくっていきたい。だからほかのことに使われるようにはならないと考えている。できるだけ事務処理の負担軽減等も鑑みたスキームを考えている」とし、財源については「とにかく国が負担するような形でやっていきたい」と述べ、「先進国では後期中等教育は無償であり、方針に則ってすすめていきたい」と続けました。
 
 また、奨学金等の充実についても言及。「まずは高校無償化の法律を検討し、次の過程として概算要求の中で検討しているところだ。教材やその他、授業料以外の負担軽減においても、奨学金制度も含めて検討している」と述べ、さらに義務教育はもちろん、就学前教育の充実についても検討していきたいとしました。
 
 私学助成については、「公私格差是正するということも考えている」とし、「公私格差がないように支援を考えている。ただ私学について全額負担ということになると、そもそも私学には『建学の自由』があるので、検討しないといけない」との姿勢を示しました。
 
 「高校希望者全入」については、「それは少し中長期的な課題」とし、「まずは無償化して経済的な理由で高校に行けないということをなくしていく、できるだけ希望した者が高校に入れるようにしていきたいと考えている」と述べました。

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