『クレスコ』

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クレスコ

〈2024年4月号 3月20日発行〉

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全教、春闘要求の実現めざし、文科省と交渉 文科省「教職員の長時間勤務解消をはかりたい」

 全教は3月17日、春闘要求アンケートの結果を基に作成した2010年春闘要求にもとづく文科省交渉を実施しました。交渉には全教からは山口隆委員長をはじめ7人の役員が出席し、また文科省からは高橋道和財務課長ら4人が対応しました。交渉の中で文科省は、教職員の長時間過密勤務の解消をめざす文科省の姿勢とともに、国民の要望をふまえた教育施策の実施を表明しました。

 この日の交渉では、重点要求として、①準要保護児童生徒の就学援助の国庫負担金の復活、②教職調整額の現行4%の維持、時間外勤務手当制度の創設、③超過勤務の縮減のため、調査などの精選・合理化、研究指定校の削減、これにかかわる会議・資料の軽減、④学級編成基準の改善、新たな定数改善計画の策定、教職員定数の抜本改善を、の4点を掲げ、実現を求めました。

 交渉の冒頭、山口委員長は、春闘の集中回答日に日程を設定していただいたことに謝意を表明するとともに、現在政府がすすめている公立高校授業料の無償化、定数改善、学級編成基準の見直しなどは重要な前進の一歩であると述べ、さらに、子どもたちにゆきとどいた教育を保障する立場から、文科省のいっそうの努力を要請しました。

 また、教職員賃金にかかわっては、毎日奮闘している教職員のモチベーションを高める角度からの賃金水準の確保を強く求めました。

 重点要求と山口委員長あいさつを受けて、文部科学省からは以下の回答が示されました。

<準要保護の就学援助について> 文科省; 「2010年度地方財政措置で拡充へ」

「H22年度予算では、国庫補助金について、新たにクラブ活動費、学級会費、PTA会費を国庫補助対象の費目に追加して計上した。それは、新しい学習指導要領に、部活動も教育活動の一環と書かれたことや、生活保護の教育扶助においても部活動が学習支援費とされたことで計上された。

国庫補助は、地方に移管されているが、地方財政計画に計上される事業費についてH22年度に総務省が、実態に応じた地方財政措置の拡充を図るということを聞いている。これらの施策により各自治体における就学援助が適切に実施されるものと考えており、国としてもこうした措置を周知し、市町村の取り組みを促し、支援して行きたい。」

<教職員給与について> 文科省;「2.76%の給与縮減方針は撤回」

「旧政権下で2.76%の給与縮減行われてきたが、昨年12月の財政当局との政務三役折衝において基本的に、この方針の撤回を確認した。したがって教職調整額の見直しは、白紙に戻ったという理解だ。一方で、予算要求した定数改善300人と自然減の3千900人を含めれば4千200人の定数改善となる。きわめて財源が厳しい中で、4200人の財源をどうするかが問題となり、政務三役の折衝の中で、従来の2.76%の縮減は撤回するけれども、今回の義務特手当、給料の調整額の若干のカットはやむをえないということになった。教員の給与以上に、子どもたちのことを考えた苦渋の選択と聞いている。」

<教職調整額の見直しについて> 文科省;「見直しは白紙に、今後の方針はない」

「教職調整額の見直しは白紙に戻ったが、今政府の中で今後の方針があるわけではない。時間外勤務手当についても、いまのところ、どうこうするということは考えていない。今後、給与の見直しということが出てくれば、また議論されることになる。ただ、今の政務三役の姿勢からすると定数改善を最優先していくということになるのではないかと個人的には思っている。」

 <長時間過密労働の解消について> 文科省;「2010年度研究指定校事業は4分の1に縮減」

「重要な問題だ。4200人の定数改善も先生方の負担の軽減に資すると思う。今後、いろいろな政策の組み合わせになると思うが、しっかりと定数改善を継続し、先生方の負担、超過勤務の縮減をはかっていきたい。また地域住民にボランティアとして教育活動に参加していただく等、外部のマンパワーを活用して先生方の負担を軽減していく。今回、いわゆる指定校事業というのを大幅にカットし、2010年度予算ベースで4分の1になっている。真に必要とされる指定校事業に厳選していきたい。」

<調査等の見直しについて> 文科省;「学校対象の調査は来年度も引き続き見直す」

「教員の勤務状況については、H18年の教員勤務実態調査で残業時間が増えており、授業の準備についても十分な時間が取れていないということは承知している。また、文科省や教育委員会がおこなっている調査についても要因の一つと思われるので、文部科学省としては、学校対象の調査について、H20、21年度において、統合・一括化をおこなってきている。本当に必要な調査になるよう、引き続き来年度も見直しを行うよう、省内で検討をおこなっている。各教育委員会が実施している調査についてもH20年3月に通知を発出し、学校に対する紹介や調査の見直しをお願いしている。」

<学級編成基準等の見直しについて> 文科省;「2011年度予算要求に反映していきたい」

「各教育委員会から『今後の安定的で、中・長期の見通しを持った採用をするために、国の中期計画を示してほしい』との要望が出されている。H23年度以降の中期計画を策定したいと考えており、そのために検討に着手した。学級編成基準について21団体からのヒアリングでは、30人~35人学級への移行という要望が多く見られた。今後、議事録の公開、国民の皆さんからの意見募集、有識者からのヒアリングを実施し、8月の概算要求までに考え方をまとめ、H23年度の予算要求に反映していきたい。」

以上の回答にたいし、全教からは重ねてつぎのとおり主張しました。

北村佳久書記長は、全教が行った春闘アンケートの集計結果を示しながら、教職員の賃金改善要求は切実であること、また、「体がもたないかもしれない」と回答した人が77%、「心の病になるかもしれない」と不安をもっている人が66%にも及んでいる実態を示しながら文科省のさらなる対応を求めました。

蟹沢昭三生権局長は、「教員給与の削減が続き、教職員のモチベーションからも賃上げは絶対に必要だ。また、教職調整額の検討が止まっているが、重要なのは勤務時間管理だ。病休者が増加する一方のもとで、長時間過密労働の是正は喫緊の課題だ。文科省調査でも学級規模と教職員の超勤の関係が明らかになっており、その点からも少人数学級の実現は急務だ」と対応を求めました。

さらに、本田久美子副委員長は、就学援助制度の周知徹底と国庫負担金の復活を強く求めるとともに、学級編成基準に関しては、全教が提出した意見書とともに、全国でとりくまれている少人数学級の効果の検証を踏まえた積極的な検討を要望しました。

以上の主張の後に、山口委員長が今後の文部科学省の誠実な努力を求めたことを受け、高橋課長は「きょうお話いただいたことを概算要求に向けての三役との打合せの中でもしっかりとお伝えしていきたい。特に少人数学級にしていくことで超過勤務が減るという傾向については、われわれとしても、今あまり議論されてない。財政当局のみならず、幅広くしっかりアピールしていきたいと思うし、国民的な議論をとおして、国民の要望をふまえた施策を実施していきたい。子どもたちの教育に責任を負うということをしっかりと自覚してやっていきたい」との姿勢が表明され、この日の交渉を終えました。

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