『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年10月号 9月20日発行〉

【特集】教職員の長時間労働と「中教審答申」を問う

  • 全教共済
オピニオン

【アピール】『子どもたちの成長・発達を保障する教育の営みを壊し、教職員の尊厳を踏みにじる「教員免許更新制」の廃止を展望し、制度に込められたねらいを貫徹させない運動を広げましょう』

中央執行委員会アピール

子どもたちの成長・発達を保障する教育の営みを壊し、教職員の尊厳を踏みにじる「教員免許更新制」の廃止を展望し、制度に込められたねらいを貫徹させない運動を広げましょう


父母、国民のみなさん。全国の教職員のみなさん。 
 
 2009年4月1日、父母・国民のみなさんの厳しい批判の声、全国の教職員の強い怒りを押し切って、教員免許更新制度が本格実施されました。私たちは、この制度が子どもたちの成長と発達を願ってすすめられる教育の営みに重大な影響を与えると懸念し、制度の廃止を要求し、当面、2009年度からの実施を凍結するよう求めてきました。それは、教員の持つ免許を10年に1度更新することを義務付けることでその身分の安定をおびやかし、30時間にも及ぶ「更新講習」を受けさせることを通して、時々の政府の考えを押しつけることを制度の根幹としているからです。恣意的運用が行われれば、言いなりにならない教員の教壇からの排除につながる危険性さえ持っているこの制度は、「まず子どもの現実をみつめて」という本来の教育の姿にも反するものです。また、この制度では、受講者は、パソコンによる申し込みから、受講枠に対する抽選への対応、費用負担から免許更新の申請手続きまで「自己責任による更新講習の受講」を徹底して求められ、今以上に子どもに向き合う時間が削られてしまいます。これらの事態は、教育の充実にとっても、子どもたちの成長・発達にとっても好ましいことではありません。この立場から、私たちは制度実施のぎりぎりまで「2009年度からの実施凍結」を求め、3月30日にも文部科学省に向けて全国からの署名を提出し、署名累計は13万3974筆に達しました。ここには、全国の教職員の怒り、教育の充実を願う父母の声が集められています。
 
 父母、教職員の願いは、子どもたちの健やかな成長です。教職員は、職場のなかで日常的に子ども・仲間とともに学びあい、研修を深めることで教育的力量をつけ、向上させています。この本質にそむく制度が多くの声を押し切って強行されたことに心から抗議の意思を表明します。
 
父母、国民のみなさん。全国の教職員のみなさん。 
 
 教員免許更新制度が実施に移されたとはいえ、制度設計の経過と現状をリアルにみれば、私たちが指摘し、主張してきた課題、弱点をそのまま残したもとでのスタートとなり、制度実施そのものが大きな矛盾の中にあります。文部科学省自身が「教員には(更新講習)受講の義務はあるが、教育行政や大学には講座開設の義務はない」と認めざるを得ないなかでの制度スタートはその象徴です。教員免許の管理システムは未作動のままですし、現職の教員でない教員免許所有者に対する行政的なケアーはまったく行われていないと言っても過言ではありません。文部科学省による大学に対する講座開設補助予算はほとんど認められず、結果的に受講者の経済的な負担は大きなものになります。
 
 こうした制度未整備のままでのスタートであることを踏まえ、問題点を広く明らかにしながら、制度廃止を展望しつつ、制度実施という現局面にあたって、教員免許更新制に託された「時々の国家権力が、教育の内容を決め、国言いなりの教育をすすめる」というねらいを通した教職員の管理・統制の動きを食い止めることが重要です。
 
父母、国民のみなさん。全国の教職員のみなさん。 
  
 制度実施が強行された教員免許更新制度は、このまま放置すれば、教育委員会における免許管理においても、現場においても大混乱が生じることは必至です。制度設計に根本的な誤りを持ち、制度実施の過程でもずさんな対応に終始してきた「つけ」を教員、教員免許所有者、ひいては子どもと教育に負わせてはなりません。
 
 この制度は廃止するしかありません。実際の運用にあたっては、「よほどの特別の事情がないと失職させない研修制度」という大前提で具体化するしか方法はありません。制度と運用の改善は急務です。
 
 「貧困と格差の広がり」をはじめ、子どもと教育をめぐる深刻な事態が広がるもとで、教職員が自らの身分に不安を感じることなく、安心して子どもに向き合い、教育活動に専念できることは教育の営みにとって欠くことのできない基礎条件です。教職員の「自己責任」を徹底して問おうとする制度であるからこそ、更新講習対象者個人の問題にせず、職場の同僚性を発揮し、支えあい考えあうことで対峙し、職場、地域からのとりくみを広げましょう。職場で起きている問題を広く社会的に明らかにしながら、「この制度で教育はよくならない」という合意を、父母、国民、教職員とともに広げていきましょう。 
 

                                     2009年 4月10日
                                 全日本教職員組合中央執行委員会
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