『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年5月号 4月20日発行〉

【特集】子どもが幸せに生きる社会を求めて―子どもの権利条約批准30年

  • 全教共済
オピニオン

【決議】『どの子にもゆきとどいた教育を保障し、お金の心配なく学べる日本に~教育全国署名運動へのご協力を呼びかけます~』

 「弁当の時間になるとそっといなくなる子がいる」「(友達が)修学旅行にいけないかもしれない」と母親に語る子、「3つ子のうちジャンケンで勝った2人が進学。1人は働いている」「授業料を払えないので高校進学をあきらめた」など、貧困と格差は子どもたちの心に重石となってかぶさっています。


 世界第2位とも言われる経済力を持つ日本で貧困化がすすんでおり、子どもたちを苦しめています。
 憲法では、「義務教育は、これを無償とする」と定められており、授業料や教科書代が無償となっています。しかし、その他の給食費や通学費、修学旅行などの費用は、原則個人負担となっています。その費用は、2006年には公立小学校で、年間9万7000円、公立中学校では16万9000円、公立高校では34万4000円、私立では授業料も含めて小学校で81万円、中学校で96万5000円、高校で78万5000円となっています。
 年収200万円以下の給与所得者が1000万人を超えている中、こうした教育費は、家計にとって大変重いものとなっています。
 国民生活金融公庫の「教育費負担の実態調査」によれば、年収が400万円以下の家計では、学校教育費や通学費などの負担が、54・3%となっています。また、1990年(H2年)と2006年(H18年)を比較すると、平均給与はほとんど変わっていないのに、小学校では1・6倍、中学校に至っては、1・8倍となっており、子どもの教育にかかる費用が家計を圧迫しています。
 貧困は、子どもたちが育つ基盤である家庭にさまざまな困難をもたらし、家庭の経済力の格差が、教育格差となって現れています。しかも、「教育格差は『結果』の格差ではなく、『機会』の格差である」と言われるように、この「格差」によって、子どもたちの学ぶ機会が保障されないところに大きな問題があるのです。
 経済的格差が教育格差を拡大し、教育格差がさらに経済的格差を拡げるという世代間連鎖を断ち切り、どこでも、誰でもお金の心配なく学べる社会を実現していくことは、貧困をなくす道でもあるのではないでしょうか。
 私たちは、教育予算の増額をめざし、「子どもたちにゆきとどいた教育を」と全国での署名運動を展開して20年目を迎えました。署名数は、20年間で累計3億6800万筆にのぼり、日本の人口の約3倍になっています。日本全国で父母・国民・教職員が力を合わせ、子どもを真ん中に、学び・話し合い・つどい、署名を集めてきました。
 このとりくみは、学級規模を45人から40人、さらにはそれ以下へと引き下げ、私学助成金を増額させ、障害児の教育条件を改善させる上で大きな力を発揮してきました。またその道程は、「少人数学級は教師が楽をするため」や「私学助成は憲法違反」などの攻撃を打ち破り、「国の責任で30人学級を」「私学助成金の増額を」という世論をつくりだす力ともなってきました。
 また、このとりくみは、子どもたちの学習権を守るということだけにとどまらず、子どもたちに、人への信頼を深め、人として成長する力も与えてきました。
 それは、「経済的な理由で学校をやめていく仲間を出さないで」と行政に訴え、私学助成増額の署名や集会にとりくむなかで、自己肯定感を回復していく高校生たちや、自分の高校の統廃合問題のとりくみを通じて「自分たちのことを本気で考えてくれる大人と出会えた」「簡単にあきらめない大人になろうと思った」と語る高校生たちが、育ってきていることにもあらわされています。
 こうしたことも確信にし、子どもたちがお金の心配なく学べ、どの子にもゆきとどいた教育が保障されるよう教育全国署名運動をいっそう広げ、すすめていきましょう。
 子どもたちが人間らしく、豊かな人生をおくることができるよう願うすべてのみなさんに、教育全国署名へのご協力を心から訴えるものです。
  
2008年7月11日  第20回ゆきとどいた教育を求める全国署名スタート集会

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