『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年4月号 3月20日発行〉

【特集】「せんせい」になったあなたへ2024

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専門部

全教障害児教育部第31回総会



  全教障害児教育部は7月11日、オンラインで第31回総会を行いました。
 例年4月におこなわれている障教部総会ですが、今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で延期となっており、7月11日にオンラインで第31回総会を開催しました。総会では、新型コロナウイルスにかかわる集中討議をするとともに、2019年度のとりくみの総括および2020年度のとりくみの方針を確認しました。

討論の特徴は以下の通りです。

<新型コロナウイルス感染症にかかわる討論>

○全く感染がない地域でも休校が必要だったのか疑問が残る。放課後デイには大きな負担をかけた。

○一斉休校で、子どもたちの生活は、昼夜逆転したり、家庭での暴力暴言が増えたり、ゲーム漬けになったりと、困難が多かった。学校での預かりも利用しにくい地域や学校があり、保護者からの「学校にもっと責任を果たしてほしい」「学校に相談しても拒否された感じがする」「放課後デイの利用をというが、放課後デイの方がもっと危険」などの、厳しい声もあった。学校が再開しても学校に来られなくなっている子どもたちもいる。「学校がやるべきことは何だったのか」「子どもたちや保護者の思いを受け止められていたのか」を振り返る必要があるのではないか。

○休校中、「オンライン授業」が推奨された。民間のクラウドサービスの利用を押し付けられた自治体も。配信やDVDなどを使ってとりくんだ地域が多いが、ICTの限界も多く語られた。家庭環境による格差、障害種による格差がある。顔を合わせたり、触れ合ったりすることで学ぶことが大切という意見が多数。

○「新たな生活様式」にあるような「触れ合わない」というスタイルは現実に合わない。

○学校再開後も、病院内訪問や施設内訪問ができない期間が長く続いた。入院中、入所中の子どもたちや、障害の重い子どもたちの教育保障について考えなければならない。

○対応がトップダウンで決められることが多く、学校や子どもたち、教職員が振り回された。トップダウンが教育の魅力、学校の魅力を奪っている。

○通常学級で「時数確保」が最重視され、交流学習などが非常にやりにくい。

○学校再開したが、過大過密の学校は感染リスクが高く、危険な状態。多くの自治体でスクールバス増車は行われたが、添乗員の確保ができず、教職員が添乗している所が多い。交渉によって添乗員の確保を実施させた組織の報告もあった。休校や学校再開に関して、保護者と共同して申し入れなどをおこなった地域もある。

○休校中、少人数学級のよさや、ゆとりある働き方の当り前さに気づいた同僚が多いとの発言も多く出された。教育条件をよくすること、教職員を増やすことが何より大切。

<教育内容、教育条件整備、憲法・生活と権利・組織強化拡大にかかわる討論>

○自閉症・情緒障害学級の評価を、通常学級の評価と同じにするということが一方的に持ち込まれた。

○全市に通級指導教室が設置された自治体がある一方で、利用する児童生徒が13人以下では教室を設置しないとした自治体もあるなど、通級指導教室の在り方が地域によって大きな差がある。

○通学バスの予算削減など、必要な予算は削られるが、学校が求めなくてもICTの予算はつきやすい。

○支援学校の新設計画があるが、浸水の危険のある土地の既存施設利用で、運動場なしプールなしの計画。計画の変更を求めて保護者とともに運動している。

○運動の継続で、文科省の有識者会議で「設置基準を策定することが求められる」と示すまでになった。さらに運動を広げたい。

○寄宿舎の定数が61年間変わっていない。国会で取り上げられたことをきっかけに声を上げたい。

○憲法を守るとりくみを地道に続けている報告がされた。

○育児短時間勤務の教職員が働きやすくなる環境整備が必要。

○学び合いの中で仲間づくりが進む経験が複数の組織から語られた。

  新型コロナウイルス感染症にかかわって、様々な問いかけがあり、今回の総会は「学校とは何か」「教育の役割は何か」を改めて問い直す場となりました。「コロナ」はまだまだ収束しておらず、今も「感染拡大を防ぎながら教育活動をおこなう」という課題に向き合っています。どうすればそれができるのかを、引き続き、障教部全体で知恵を出し合わなければなりません。

 また、学校の過大・過密が感染症対策を困難にしていることが明らかになりました。学校が小規模で通学時間が短く、空間にもゆとりがあれば、もっと工夫ができるのに、普段から教室不足の学校では対策の取りようがありません。不安を抱えながら、過密な中で授業を再開しているのが現状です。

 そうした中、「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」の「これまでの議論のまとめ」で「国は特別支援学校の設置基準を策定することが求められる」と記したことに触れる発言もありました。私たちの長年の運動の成果であることを確信としつつ、さらに運動を強めて、実効性のある設置基準の策定につなげようと決意を固め合いました。

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