『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年4月号 3月20日発行〉

【特集】「せんせい」になったあなたへ2024

  • 全教共済
オピニオン

【談話】『「骨太の方針2009」の閣議決定について』

                   2009年 6月24日 全日本教職員組合 書記長 北村 佳久

.6月23日、麻生内閣は、経済財政諮問会議から「経済財政改革の基本方針2009~安心・活力・責任~」(以下「骨太の方針2009」)の提出を受け、即日閣議決定した。
 今回の「骨太の方針2009」をめぐっては、「骨太の方針2006」で示された社会保障費の毎年2200億円抑制方針の継続について自民党内部でも紛糾するなど、異例の展開となった。 

 これは、この間、自公歴代内閣がすすめてきた国民生活切捨て・大企業優遇の「構造改革」路線の矛盾が、後期高齢者医療制度の問題やこの4月から実施された生活保護の母子家庭加算の全廃などでだれの目にも明らかとなり、国民の強い批判の声と撤回をもとめる運動が大きく広がる中で、自公政権が名実ともに追い詰められた結果である。

.しかし、同時に、「骨太の方針2009」は、その基本においては「骨太の方針2006」にもとづく歳出削減路線を引き継ぐことを明言し、「安定財源なくして制度改正なし」の原則のもと、「徹底した行政改革と歳出改革」の継続、2011年度からの「税制抜本改革」による安定財源確保を強調している。「骨太の方針2009」には具体的な数字は明示されなかったが、その審議の過程では、消費税12%など国民への増税路線が目論まれていることも明らかになっている。その一方で、「成長力の強化」「低炭素革命」などを大義名分とした大企業向け施策や北朝鮮問題をテコにした防衛力強化は、事実上の「聖域扱い」となっている。
 
 また、これまで「構造改革」路線の御旗に掲げてきた「『官から民へ』、『大きな政府から小さな政府へ』といった議論を超え」るとしながら、その中身は「無駄なく『機能する政府』への変革」にむけ、国家公務員の「新たな定員合理化計画(5年間で10%以上)」策定をうちだすなど、公務・公共サービスのいっそうの切り下げをねらっている。
 
 教育についても、切実な要求である教職員定数増について具体的計画を示さず、「多様な手段を通した学校のマンパワーの充実」など臨時教職員の活用で対処しようとしている。さらに、「教育振興基本計画」にもとづき、「徳育」「武道教育」の推進をはじめ「新学習指導要領の円滑な実施」や「学校の適正配置」として学校の統廃合を促進するなど、安上がりの教育とともに教育の国家統制や競争の教育をすすめる重大な問題をもっている。
 
.一方、貧困問題の深刻化など「構造改革」路線の破綻しつつある現実と、国民の声や私たちの運動を反映し、今回の「骨太の方針2009」では、従来からある「成長力の強化」とともに「安心社会の実現」が大きな柱のひとつとなっている。この中では、雇用対策、幼児教育の無償化についての検討や「就学困難な高校生・大学生への公平な教育機会の確保のための制度(授業料減免等教育費負担の軽減)の質的充実・拡大」、障害者自立支援法の見直しをはじめ、教育・雇用・社会保障などにかかわって私たちが掲げてきた要求が一部含まれており、文部科学省概算要求と2010年度予算編成において具体化されることがもとめられる。
 
 いま、「構造改革」路線に対する国民の怒りの声は、麻生内閣退陣、自公政治の転換にむけ急速に拡大している。教育をめぐっても、貧困と格差の広がりの中で、教育費や学費の無償化をもとめる声も高まっている。こうした国民の声に追い詰められた、選挙目当てとしかいいようのない小手先のごまかしではなく、政治の中身を変えることこそがいま必要である。 
 
.全教は、「構造改革」路線に固執する自公政治に終止符をうち、国民本位の施策を実現するために、きたるべき総選挙でのたたかいに全力をつくす。また、父母・国民との共同をひろげ、貧困と格差の中で苦しむ子どもたちの就修学を保障する緊急のとりくみをすすめるとともに、国の責任による30人学級の実現や教職員定数増、私学助成の増額など教育予算の増額をもとめ奮闘する決意である。

以上
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