『クレスコ』

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クレスコ

〈2024年4月号 3月20日発行〉

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【声明】『2009年度政府予算案について』

                     2008年12月24日 全日本教職員組合 中央執行委員会

 12月24日、政府は2009年度政府予算案を閣議決定しました。アメリカ発の金融危機に端を発した経済危機が、日本経済にも深刻な影響を与え、「派遣切り」などによる失業や、中小企業への貸し渋り、貸しはがしによる倒産を増大させています。こうした中、イギリスが消費税の引き下げを実施し、ドイツやフランスが雇用対策を強化しているように、外需依存、国民生活切り捨ての経済財政運営から、労働者・国民の生活重視、内需主導に切り替えることなしに危機を乗り切ることができないことは明らかです。政府は、国の予算編成を抜本的に切り替え、国民生活重視、雇用や経営を守る予算へと舵を切るべきです。

 しかし、閣議決定された予算案は、景気悪化などに対応するとして、地方交付税の1兆円上積みや社会保障費増額などで、08年度当初予算比5兆円以上の増額となったものの、大企業優遇、軍事優先、アメリカいいなりの「構造改革」路線を踏襲し、後期高齢者医療制度には固執するなど、引き続き国民に犠牲を強いるものとなりました。
 教育予算についても、5兆2816億円と08年度当初予算比78億円増額となり、「骨太の方針2006」と行革推進法による歳出削減、人員削減路線はそのままに、教育振興基本計画や改訂学習指導要領を具体化する予算案となっています。
 
 第1に、定数改善については、もともと概算要求段階でわずか1500人の改善にとどまっており、私たちの要求とはかけ離れたものでしたが、さらに削減され、実質800人の改善にとどまりました。これは、自然減の1900人を考慮するなら、1100人の人員削減となるものです。ただ、主に主幹教諭にかかわる定数が削減され、特別支援教育や食育での定数改善は、通級指導の改善が縮小されたものの、その他は概算要求どおりとなっており、不十分とはいえ、私たちの声を一定反映するものとなりました。
 また、非常勤講師については、1万4000人が計上されましたが、講師の確保に困難をきたしている現状で人員の確保そのものが危ぶまれる上、そもそも教育の継続性や同僚性の発揮の上で問題があり、正規の教職員こそ増員すべきです。
 
 第2に、教員免許更新制の講座開設者に対する補助は、山間へき地などでの開設以外は、認められず、概算要求の47億円は、10億円と大幅に減額されました。こうしたもとで文科省が強行実施するならば、講座数の確保や費用負担などでいっそう矛盾を拡大するものとなることが予想されます。文科省は、少なくとも2009年度からの実施凍結に踏み切るべきです。
 
 第3に、改訂学習指導要領の前倒し実施にともなう予算措置では、「首相特別枠」で武道場の建設補助について8割以上を復活し、理科や算数、道徳の補助教材についても、一定額を復活しました。これは、「愛国心」押しつけ、競争と格差づくりの改訂学習指導要領路線の推進を財政的に裏付けるものです。
 
 第4に、「骨太の方針2006」で2・76%の縮減を決めた教員給与について、2年連続となる義務教育等教員特別手当の縮減と「メリハリある教員給与体系の推進」として、障害児学校・学級に係る給料の調整額が縮減されます。恒常的な長時間過密労働が放置されているなか、教員給与については、地方自治体における独自削減の広がりに追いうちをかけるものであり、到底認めることはできません。
 
 第5に、私学助成について、高校以下は昨年度と同額を維持しましたが、大学部分は骨太方針どおり約1%削減となりました。貧困と格差が広がり、学費免除制度が国立・私立の別なく広がっているにもかかわらず、国立大学の運営費交付金の削減も含め、学生の負担増につながる重大な問題です。
 
 第6に、奨学金について、無利子枠を2000人増としていますが、その内実は回収を強化することによって財源を確保しようとするものです。内定取り消しなどの雇用不安が増している中、高学費に苦しむ学生の要求に応えるものとなっていません。返還免除や返還猶予などの措置を拡大すること、給費制奨学金を創設することこそが求められています。
 
 第7に、学力テストについては、約57億円とほぼ概算要求どおり認められました。しかし、結果公表など矛盾が深まっており、実施し続けることに多くの関係者からも疑問が出ているもと、こうした予算こそ削減し、他の条件整備に回すべきです。
 
 第8に、学校支援地域本部については、3400カ所での実施を見込んだ予算となっています。学校教育への介入につながる可能性のあるものであり、警戒が必要です。
経済危機によって、「子どもの貧困」問題がいっそう深刻となることが予想される中、子どもたちがお金の心配なく学べる環境を整備することこそが求められているにもかかわらず、そうした予算措置がされていないことは、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず」、「経済的地位」によって「差別されない」と定めている憲法や国際人権規約にも反するものと言わざるをえません。
 
 12月22日全教委員長は、直接、財務大臣に対し、子どもと向き合う時間を確保するための教職員の増員を求めました。全教は、今後、父母・国民や教職員、何よりも子どもたちの願いを実現する政治への抜本的な転換に向け、父母・国民との共同をいっそう強化し、全力をあげることを表明するものです。

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