『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年10月号 9月20日発行〉

【特集】教職員の長時間労働と「中教審答申」を問う

  • 全教共済
ニュース

新型コロナウイルス感染症対策にかかわる緊急文科省要請

 全教は、2月28日、全国の小中学校・高校・特別支援学校の設置者に対し「3月2日(月)から春季休業の開始日までの間、臨時休業を行う」ことを求めた安倍首相の新型コロナウイルス感染症対策本部会合での発言と文部科学省事務次官通知に関する緊急要請を行いました。

 要請の冒頭で全教は、学校休業日等の設定は、子どもたちや地域の実態を踏まえて各学校の設置者が行うものであり、首相が一律に要請するものではないこと、今回の決定は子どもや学校の実状を踏まえたものではなく、あまりにも拙速であること、そのため各学校に大きな混乱をもたらし、かえって子どもたちの安全を確保できない事態を引き起こしてしまうことを指摘し、以下の3点を要請しました。

1.今回の首相による要請は、各学校や教育委員会に強制するものではないことを明らかにすること

2.休校の時期などを含む新型コロナウイルス感染症対策については、各学校や教育委員会が、児童生徒や地域の実態を踏まえ、主体的に検討し判断するものであることを明らかにすること

3.臨時休校等の新型コロナウイルス感染症対策にともない生じる課題について、学校現場がすみやかに対応できるよう、各学校や教育委員会の実状や要望を把握し、必要な財政支援等の緊急措置をとること

それに対し、文科省は次のように回答しました。

 昨日、政府対策本部からの要請を受け、それを踏まえて文部事務次官通知という形で各都道府県教育委員会に通知した。基本的には、休校等の判断については学校の設置者の判断となる。あくまで「要請」を「お願いする」というもので、必ずしも一斉に休校の措置をするという内容ではない。緊急事態であり、ここ1~2週間が蔓延するかどうかの「瀬戸際」であるという対策本部からの報告に基づくもの。子どもたちと教職員のみなさんの健康を第一に考え、蔓延を防ぐための措置をとっていただけるようお願いしたい。

 その後のやりとりの中で全教は、障害のある子どもたちへの対応に特段の対応を求めるとともに、日中、家庭に保護者がいない子どもたちへの配慮も重要だと指摘しました。文科省は「そういった世帯への支援を含めて学校を開放する、学校で授業を存続するといったことについては、我々のほうで申し上げることではない。各自治体や学校の方で適切に判断してほしい」と回答しました。全教は、給食がないと一日食事ができない子がいることや「学童保育が大変なことになる」ことが予想されるとして、厚労省などと連携をとり、子どもたちの生活を守る体制の構築を求めました。

 また、教育課程にかかわって、通知には、授業時間数が標準を下回った場合でも「施行規則に反するものではない」と書かれているが、後で「時数を回復せよ」などと言われるのではないかと質しました。文科省は、「通知の通り」だと回答しました。卒業式についても「児童生徒の発達段階にとって非常に重要な行事であり、それを一律に中止するような要請は一切行っていない。ただ、実施する場合にも、ウイルスの蔓延を防ぐために必要最小限の規模でとお願いしている」としました。

 さらに全教は、給食の食材を提供する業者やパートの調理員が「仕事がなくなってしまう」と心配している問題、臨時・非常勤教職員の給与の問題、子どものために親が仕事を休まざるをえなくなれば経済的にも厳しくなる問題などを上げ、緊急に各教育委員会に要望を聞き、財政面での支援を行うよう要求しました。文科省は、「自治体の要望を聞き、臨時の対策費を検討していきたい」「他の省庁とも連携して適切な対応ができるよう検討していきたい」としました。

 要請の最後に、全教は、「『要請』という言い方ではあれ、教育の具体的な中身に対して首相がこのように一定の方向性を示したことは問題である」と指摘しました。

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