全教は3月13日(水)、文部科学省と「全教2019年春闘要求書」にもとづく交渉を行いました。全教から中村尚史中央執行委員長、小畑雅子書記長をはじめ10人が参加し、文科省からは合田哲雄 初中教育局財務課長、志尾武章 総合教育政策局教育人材政策課教育免許企画室室長補佐、森田隆光 総合教育政策局教育人材政策課教員免許企画室更新係長が参加しました。
冒頭に中村委員長から、教職員の働き方について、文科省が主管官庁として法に基づいて教職員定数や学級編成、教職員給与等について責任ある施策が求められていること、重要なのは現場の実態が法の主旨にそったものとなることであり、結果に責任を持っていただきたいことを述べました。また、この間国際人権規約や子どもの権利条約などに関わって、教育費の無償化の問題や国連子どもの権利委員会が行った勧告に触れ、全国一斉学テの中止など競争主義的教育政策の転換をすべきということも改めて訴えました。交渉は4つの重点要求にそってやりとりが行われました。
「1年単位の変形労働時間制」導入で長時間過密労働解消はできない
教職員の長時間過密労働の解消に向け、「1年単位の変形労働時間制」を教育現場に導入しないことを求める要求に対して、文科省は、そもそも「1年単位の変形労働時間制」が議論の俎上に上がった経緯が、かつての夏休みのまとめどりを念頭においたものだったことを明らかにしました。ただ地公法上は1年単位での変形労働時間制度はできないことになっており、そのことが中教審で議論になったことも述べました。そして、夏休みの研修や部活の見直しを図り、お盆の時期の大会日程をはずすなどの対応を行うとしながら、「1年間の変形労働時間を導入することが在校等時間の減少につながるものは考えていない。まずは在校等時間の減少に取り組んだ上で1年間の変形労働時間ということを選択として考えていく」「変形労働時間制を導入したからといって、17時から職員会議をするとか授業を1コマ増やそうということをやっては元も子もない。学期中に勤務時間を増やしたことが働き方改革にとってマイナスになってはいけない」と述べました。
全教からは米田副委員長が「形の上で普段の勤務時間を1時間延長することで時間外勤務が減ったように見せかけるトリックと指摘せざるを得ない」と述べ、労働時間短縮の具体的な担保なしに1年単位の変形労働時間制導入でなく、所定内の勤務時間で仕事が終えられるために、文科省の主体性を発揮して、教職員定数の抜本的改善をはじめとした環境整備を行うよう強く求めました。
「上限ガイドライン」の運用は給特法改正が前提
文科省は、各学校で給特法の枠組みを踏まえて勤務管理等が行われており違法とは認識していないとし、「ただ小中(文科省調査が小中対象)の先生方の在校等時間はやはり長く、是正しなければならない」と答え、少人数学級については「クラスサイズについて実証研究中」、持ち時間数の上限設定に対する考えは「現段階では考えていない」「小学校においては特に教科担任制の充実や総授業時数、1コマ当たりの時間等を含めた教育課程のあり方を見直す必要がある」と回答しました。「勤務時間上限ガイドライン」の運用にあたり「特例的扱いの削除」を求めたことについては、いじめ・自殺等への対応が必要な場合があり得るとして、中教審答申の内容を繰り返しました。
全教の檀原書記次長は、すでに各地では時短ハラスメント、とにかく早く帰れというような状況が生まれていることを指摘した上で、時間外勤務手当を払う制度を作ることなしに歯止め効果は働かないのではと懸念を述べました。「時間外勤務を命じない」とした給特法の原則を維持して、客観的に把握された時間外勤務について手当を支払うという方向で改正をすることなしに、上限ガイドラインを動かすべきではない、とりわけ特例的な扱いを認めることは無用かつ有害であり、削除すべきと訴えました。また、定数増については文科省は「財務課長としてぜひやらせていただきたい」としながら、厳しい財政状況の下で「社会の理解と支援がなければできない」と述べました。全教から「国民的な理解・支援が進むような運動をこれからも進めていきたいと思っているので、そういう声をぜひ受け止めていただきたい」と重ねて訴えました。
授業の持ち時間数の考え方はそもそも1日4コマだった
現在の長時間勤務の実態が給特法に違反しないとする文科省の回答に対し、糀谷中執は、厚労省の過労死等防止白書にある教職員の実態で、職種でも所定勤務時間を2時間以上超えていること、理由として「やるべき業務が終わらないから」が最も多く、所定の時間で終わらない業務を与えられているということはやはり給特法に反すると述べました。そして、1958年の標準法制定時に当時の文部省が教職員定数算定の基礎として一人当たりの教科指導の時数を1週間24コマ、1日4コマと算定をしたことを述べ、「週5日制になった時、24を6で割るのでなくて5で割るのだから、そこで考え直していただかなければならなかったはず」と追及しました。