『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年10月号 9月20日発行〉

【特集】教職員の長時間労働と「中教審答申」を問う

  • 全教共済
ニュース

改訂学習指導要領実施に伴う、小学校における中学年での「外国語活動」、高学年での「外国語科」の導入にかかわる緊急要請を実施

 全教は、914日文部科学省に対して、改訂学習指導要領実施に伴う小学校における中学年での「外国語活動」、高学年での「外国語科」の導入にかかわる緊急要請を行いました。要請には、全教より宮下教文局長、糀谷中央執行委員、波岡中央執行委員が参加し、文科省からは日向端聖(初等中等教育局外国語教育推進室専門職)ら3人が出席しました。



 冒頭に、全教から、年間35時間もの授業時数増となり子どもたちに多大な負担をおしつけるものとなっていること、多くの小学校教員は英語教員免許を取得しておらず、児童に十分な指導を行うことができないもとで負担増を押し付けられること、専門家から「母語(国語)指導との関連性があきらかでなく、いっそうの学力格差を生み出す」などの危惧が表明されていること、必要な条件整備が行われていないもとで「外国語関連の授業増加に対応するための策がないまま、現場に丸投げされていることに憤りを覚える」などの声があがっていることなどを示し、次の2点について緊急要請を行いました。

①改訂学習指導要領の抜本的見直しを行い、小学校における中学年での「外国語活動」、高学年での「外国語科」の導入を見直すこと。

②小学校における中学年での「外国語活動」、高学年での「外国語科」の導入の先行実施及 び移行措置を行わないこと。

 文科省は、「先生方の負担については承知している。どう授業時間を確保するのかについてカリキュラム・マネジメントの研究を始めている。来年度に実践例を示す予定である。」とした上で、「文科省で『Hi,friends!』に代わる新教材を作成している。今年度中に全児童数を提供する予定だ。教師用指導書も配布する。小学校3年から6年までの全時間の指導案を示す。研修ガイドブックを作成している。」としました。また、「母語との関連について改訂指導要領でも強調されている。新教材の中で英語を学ぶことで日本語のしくみやよさに気付くような内容になっている。お互いに関連しあって、言語能力を高めるのではないか。先生の負担感は、承知している。模擬授業を映像化し提供する。負担感・不安を少しでも改善したい」と回答しました。

 全教は、回答に対し、新教材と全時間の指導案を示すことは特定の指導方法を押しつけるものであることを指摘しつつ、どのように配布・活用するのかを質しました。また、さらなる研修をおこなうことや新たな授業時数増加でさらに教員への負担が増加し無理があること、カリキュラム・マネージメントとしてモジュールでの実施や習得する語彙数が増加することは、大きな児童への負担増となり、格差が広がり英語嫌いが増えることを指摘するとともに、英語教育推進リーダーの配置について質しました。

 文科省は、「新教材と指導書を9月にはデータで配信し、来年2月には全国の学校に直送する。使用義務はない。教科書が出るまでの穴埋めとして、国作成の教材とする。指導案は押しつけではない。負担感の解消として考えるベースになるものを例として提供したもの。『ハイフレンズ』も同様。指導方法についても目の前の子どもの実態をとらえてどう育てるかに応じて国が例示するもの。特に、文字指導でひたすら『10回書いてくる』などのことはしないなどのメッセージも周知する。推進リーダーは、平成26年から5年間で各200人、1000人配置する。外部専門機関と連携した英語教育推進事業として各県での研修をすすめる」としました。また、授業時数増加に関わる負担増について、「枠に入らないということは承知している。時間割に物理的に入らないことも含め、検討している。今後取り組み情報収集し、例示する」としました。さらに、取得語数の増加について「言語活動がまずあって、それを支えるために必要な語を使う指導をする。『この単語をいついつまでに覚えなさい』でなく、生活の中で身に付けていく。それほど負担感はない」としました。

 全教は、多くの小学校教員が英語免許を取得していないことへの対応を質しました。文科省は、「以前の生活科導入の際と同様、現行の免許での指導が可能である」としました。 

 全教は、多くの専門家からも英語の早期教育に関する心配が表明されていることを指摘し、すでに先行実施されている学校や移行措置が計画されている中、新教材や指導案が示されても子どもと教員への負担は解消されないこと、そもそも国が一律に新教材や指導案を示すことは、教材と指導方法を押しつけるものであり許されないことを指摘し、改めて、改訂学習指導要領の抜本的見直しと小学校における中学年での「外国語活動」、高学年での「外国語科」の導入を見直すこと、その先行実施と移行措置を行わないことを求めました。 

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