『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年4月号 3月20日発行〉

【特集】「せんせい」になったあなたへ2024

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教育勅語是認をゆるすな! 「憲法に反する教育勅語を教えることを是認する松野文部科学大臣発言の撤回を求める」要請

 全教は、419日(木)に、文部科学省に対し「憲法に反する教育勅語を教えることを是認する松野文部科学大臣発言の撤回を求める」要請書にもとづき、
①松野文科大臣の教育勅語を是認する発言を撤回すること
②憲法と子どもの権利条約の理念に反する教育施策をおこなわないこと
③教育勅語を是認、肯定する言動等については、それらを許さない姿勢を断固として示すこと
を要請しました。

 全教からは土方功副委員長、小畑雅子書記長、宮下直樹書記次長、糀谷陽子中央執行委員、波岡知朗中央執行委員、佐竹葉子中央執行委員が参加し、文部科学省からは、石橋孝則大臣官房国際課外国人教育政策係、松田昌幸政策課教育改革推進室改革企画係長、高瀬智美教育課程課専門官(併)企画調査係長が対応しました。



 冒頭に小畑書記長から、314日の記者会見で、松野文部科学大臣が、教育勅語が法制上の効力は喪失していると認めながらも、教材としての「活用」について是認するかのような発言し、その後も政府の答弁書が出されていることに対し、撤回をし、教育勅語を是認・肯定するような発言について許さない毅然とした姿勢を文部科学省に求めました。教育勅語は、大日本帝国憲法のもとでの教育に対する基本理念として、天皇が国民に命じる形で制定されたものであり、日本国憲法の国民主権とは相いれないもので、子どもたちを侵略戦争に駆り立てる精神的支柱としての役割を果たしてきたもので、近現代史の資料として扱われるということはあっても、道徳の時間の教材や朝礼で朗唱することなど「教材として活用する」ことを容認されるものではないことを指摘しました。また、教材は子どもの実態や発達段階に応じて、教員1人ひとりが選定し、授業に使うことになっているが、憲法と相いれない教材を「活用する」ということは容認できないと主張しました。

  文部科学省は「教育勅語は、憲法、教育基本法の成立をもって効力を喪失している。教育の唯一、根本として位置づけた戦前のような形で用いることは文部科学省としては不適切である」としつつ「教材の活用については法律の趣旨に従った有益、適切なものである限り、校長や設置者の責任の判断で使用することができる。教材の個別具体的な是非については、文部科学省はあらかじめ判断する制度にはなっていない」としました。また、教育勅語の教材としての活用について「教育勅語を用いることが憲法や教育基本法の趣旨に反するか否かについては、制度上設置者、所轄庁がまず判断する。判断基準としては、憲法の基本理念や、教育基本法で定める教育の目的に反しない適切な配慮がされているかを個別具体的に状況に即して総合的に考慮して判断されるべき。その中で、憲法や教育基本法に反する形で教育勅語を教育に用いるということであれば、政府としてもそれは許されるものではない」と述べました。

 全教は、教育勅語は衆・参議院で失効・廃止が議決され、日本国憲法とは相いれないことに確認を求め、文部科学省は「全体としてはそうだ」と述べました。

 全教は、教材として教育勅語を活用するのは、憲法と教育基本法に則って資料として否定的に使うしかないこと、道徳での活用など中身を肯定することは当然あり得ないということを指摘しました。文部科学省は「個別具体的は基本的に所轄庁が判断することで、文部科学省として示すようなことではない」とし、「森友学園でやられているものに関しては、まずは大阪府の方でご確認をいただいている。個別に判断する」としました。

 全教は「文部科学省は憲法、教育基本法に反するかどうかの判断はできないのか」と追及し、文部科学省は「まずは学校現場の判断があり、設置者・所轄庁の判断がある。その上で文部科学省が、設置者・所轄庁の判断が不適切であるという場合には国として判断をお示しする」とくりかえしました。

 全教は、これまで教育勅語に関わって、所轄庁が憲法、教育基本法に反していると判断している事例を質し、文部科学省は島根県で教育勅語を奉読していた昭和58年の事例をあげ、文部科学省から県に対して指導したことを明らかにしました。

 全教は「教育勅語の中身は悪いと思っていない」と一人の大臣が言えば、文部科学省としてそれでいいのかと追及し、文部科学省は「政治家個人としてお話になったことに対して、文部科学省としては申し上げる立場にないが、国会でも質問主意書でも憲法や教育基本法に反する形で使われることは不適切であると述べている」としました。

 全教は「教材は、学校ごとに発達段階や実態に応じて、よりわかりやすく真理・真実に基づいて理解できるよう判断して活用している。そこに文部科学省として手を突っ込むようなことをすべきでない。しかし、教育勅語は、憲法の精神とは相いれず廃されたもので指導原理として使うことはダメなんだと言いながら、そういうものとして使われている実態があり、国民の目にも明らかになっているというもとで、文部科学大臣があたかも容認、是認したかのように聞こえてしまう発言をしているということについて、現場を混乱させることになるという懸念を申し上げている。文部科学省として毅然とした態度で対応していただきたい。また、学校現場に混乱が起きないように、日本国憲法、子どもの権利条約にもとづいた教育が子どもの実態に合わせてできるように、努力していただきたい」と強く要請しました。

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