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改悪教育基本法の具体化をゆるさず、民主教育をすすめる学習・討論集会【基調報告】

【基調報告】山口 隆 全日本教職員組合 副委員長(教文局長)

※本「基調報告」は、3月11日に開催された「改悪教育基本法の具体化をゆるさず、民主教育をすすめる学習・討論集会」で提案されたものを、加筆・補強したものです。

はじめに

 全教は教育基本法改悪を許さぬたたかいをたたかい抜き、戦後教育運動史上特筆すべき重要な到達点を築きました。全教は、2月10日から12日まで開催した第24回定期大会で、この歴史的たたかいから教訓を汲みつくし、憲法闘争を基軸に、憲法と教育の条理に立脚して教育を前進させようという方針を確立し、教育基本法闘争の総括・大学習運動を提起しました。これをすすめるために、本日、みなさんにお配りしている職場討議資料を作成し、職場、地域からの総括・大学習運動を呼びかけるものです。本日の学習討論集会は、このとりくみをすすめるための出発点と位置づけます。
 すでに、大会方針をうけて具体化の計画を作成したり、具体化をはかったりしている組織もあることと思いますが、本日の学習討論集会では、あらためて、この間の教育基本法闘争の到達点を確認するとともに、この基調報告で、このたたかいが築き上げた到達点のもつ意味を解明し、討論をとおして深め、各組織からの参加者で共有し、総括・学習の大運動を展開する重要な契機としたいと考えます。
 同時にそれは、実践的総括・大学習運動として展開されるべきであり、本学習討論集会では、「参加と共同の学校づくり」の実践的意思統一をすすめるとともに、当面の全国一斉学力テスト押しつけをゆるさぬとりくみ、改悪教育基本法具体化としての教育改悪3法案を阻止するたたかいの意思統一を行いたいと考えます。
 

1.教育基本法改悪をゆるさぬとりくみが築いた壮大な到達点

 あれこれの到達点については、討議資料にかなりくわしく記載していますので、それに譲りつつ、ここでは、概括的に到達点を確認するとともに、築き上げた到達点は、今後のたたかいにとってどういう意味をもっているのかを中心に提起します。
 
(1)どの指標をとっても、文字通り全教結成以来最大規模のたたかいに
 まず、宣伝については、昨年1年間に全教が作成したビラだけでも6種類650万枚にのぼります。全国各地で作成された独自ビラや手づくりビラなどを含めると、このたたかいで作成、配布されたビラは全国で2000万枚を超えました。駅頭、街頭での宣伝行動も大阪での408駅頭5000人の宣伝行動をはじめ、各地で無数に、しかも大規模に展開されました。
 集会では、東京での2万7000人集会をはじめ、北海道の組合所属の違いを超えた1万1000人集会、大阪で7500人、岡山で4000人、長野で3000人、山口2100人、島根1150人など、それぞれかつてなかった規模での集会を開催し、成功させてきました。そうした大規模集会と同時に、地域・草の根からの中小規模の集会、学習会が無数に開催されました。
 中央集会にもこれまでにない結集がありました。連日日比谷野外音楽堂があふれかえり、臨時国会最終盤に開催した12・13集会は2日前に決めたにも関わらず、4500人が日比谷野音に集結しました。
 
(2)かつてなく強まった労働組合、民主団体との共同・団結
 労働組合、民主団体との共同も大きく広がり、それは、憲法改悪を許さぬとりくみと固く結んで展開されました。当初は、教育基本法問題は、教職員と教育現場の問題という認識が、日本の将来にかかわる大問題という認識となり、民主団体、労働組合は我がこととしてとりくみました。このたたかいの前進の中で全労連議長を代表とする労働組合、民主団体の共闘組織である「教育基本法改悪をゆるさない各界連絡会」が結成されましたが、これは、その後のたたかいにきわめて重要な役割を果たしました。
 全教は連日の国会前座り込みを敢行し、ここに民主団体、労働組合が連日集結し、毎日、連帯のあいさつを行いました。民主団体、労働組合は、教育基本法問題は、教育にたずさわるものにかかわる問題ではなく、日本の将来にかかわる大問題という認識を高め、教職員組合のとりくみへの協力ではなく、文字どおり共同のとりくみとしてたたかうという質的な転換をとげたといえます。
 
(3)戦後教育史上最大規模で展開された教育についての国民的討論
 このたたかいをとおして、展開された国民的討論は、戦後史上最大規模のものとなりました。そしてその国民的討論は、「教育とは何か」「教育とはだれのためのものか」という根源的問いかけを含んで展開されたことがもっとも重要な特徴です。それゆえ、この国民的討論は、国民的大学習運動として展開されたといえます。「はじめて教育基本法を読んだが、平和を希求する国民の願いに根ざし、子どもたちを人間として育てるいとなみを励ましている教育基本法に強く心を打たれた」という感想が各地から寄せられたことにも、そのことが示されています。
 
(4)目を見張る教職員の立ち上がり
 このたたかいの先頭に立ったのが、全国の教職員でした。それは、教職員の誇りと尊厳をかけたたたかいとして展開されました。教職員は、月80時間を越える超過勤務という激烈な多忙のもとにおかれていますが、そのなかでも、少しの時間を見つけて職場で話し合い、学習し、集会にかけつけ、ビラを配り、駅頭でマイクを握り、国会にはせ参じ、大奮闘しました。中には、学級での指導困難を抱えていたり、親の介護などの家庭の事情などで、直接には立ち上がれなかった教職員も、あったと思います。しかしそうした中であっても、力をこめてとりくまれた日々の教育活動自体が、教育のいとなみを太くする重要な力であり、教育基本法を学校教育に具体化するとりくみであったことを、あらためて指摘しておきたいと思います。
 
(5)教職員と教職員組合が果たした重要な役割と社会的信頼、権威の高まり
 「新聞全教」新春座談会で「集会、宣伝、国会傍聴などのとりくみが中央・地方で無数に行われましたが、それは全教なしにはできませんでした。たたかいの最終盤には、地方の新婦人のニュースに教職員組合のことが記事として載るんです…それは、連帯という気持ちだけにとどまらない、私たち親も心を揺さぶられてという思いがあります」と新婦人の方が語っています。冒頭に述べたように、全教は、地域・草の根からの運動と国会闘争を結び、最後の最後までたたかい抜きました。このたたかいをとおして、日本の教育運動は、全教抜きには語れない、という状況がつくりだされました。全教は、文字どおり、社会的信頼と権威を高めました。それは、今後の憲法改悪を許さぬたたかいを基軸に、憲法と教育のいとなみに立脚して教育を国民的につくりあげるたたかいにとって、はかりしれない重要な意義をもつものです。
 
(6)これらは、今後のとりくみにとってどのような意味を持つのか
 以上、概括的に述べてきたこの間の運動の到達点は、どのような意義をもつのでしょうか。ここでは、それを5つの重要な意義として整理したいと思います。
 
 第1は、後に述べる、改悪教育基本法との実践的対決点としての「参加と共同の学校づくり」の条件を限りなく広げたことです。この間の教育についての国民的討論の展開は、そのまま教育についての大学習運動でした。そして多くの父母・国民が教育においては、子どもが一番大事、そしてその教育は父母・国民、教職員が力をあわせてつくるのだ、という当然といえば当然の、しかし、それが教育基本法改悪勢力との基本的対決点であった中心部分をしっかりにぎったことが重要です。教育基本法闘争は、教育を語りあう土壌を、これまでになく大きくきりひらきました。これは、「参加と共同の学校づくり」の前進にとって、きわめて重要な積極的条件となっています。
 
 第2は、国民的に教育をつくりあげる運動の展望を大きくきりひらいたことです。今後、改悪教育基本法具体化をゆるさぬたたかいが、日常的、連続的に求められます。このたたかいは、「参加と共同の学校づくり」と固く結んで、地域・草の根からの国民的教育合意運動として、展開されなければなりません。この間の国民的討論の展開と、労働組合、民主団体との団結・共同の強化はこの運動をすすめていく土台を地域から築いたといえます。当面、全国一斉学力テスト押しつけ反対のたたかい、教育改悪3法案阻止のたたかいが求められますが、全国一斉学力テスト押しつけ反対にかかわって、すでに全国各地から、出足はやいとりくみの開始が報告されていることは重要です。このこと自身、教育基本法闘争が築いた到達点を確信させるものであり、今後の運動発展の展望を示すものです。確信を持ってとりくみをすすめましょう。
 
 第3は、この運動を主体的にすすめる教職員と教職員組合の果たすべき社会的役割と権威を大きく高めたことです。すでに述べたように、このたたかいをとおして、全教は社会的信頼を大きく高めました。それゆえ、私たちに対する期待も限りなく大きくなっています。いま、私たちは、この社会的信頼をいしずえに、父母・国民の期待にこたえる教職員組合運動を、父母・国民のみなさんと力をあわせて大いに展開する歴史的時期に立っています。この運動を地域からすすめるうえで、この間の全教への信頼と権威の高まりは、何よりも大きな条件をつくりあげました。
 
 第4は、憲法闘争を国民的に大きく広げる展望をきりひらいたことです。大会や中央委員会でも繰り返し議論されたように、この間の教育基本法は憲法闘争と一体に、あるいは、その重要な一環としてとりくまれました。そのことが、教育基本法闘争が憲法闘争を押し上げ、憲法闘争が教育基本法闘争の裾野を広げた、といえる状況をつくりあげた重要な要因です。この位置づけを明確にしたからこそ、いま私たちは、憲法と教育のいとなみに立脚して、父母・国民とともに教育をつくるという、展望のある正確な方針を共有しているのです。同時に、憲法闘争と一体に教育基本法闘争をたたかいぬいたからこそ、安倍内閣が憲法改悪を公言し、あろうことか、5月3日までに、憲法改悪のための手続き法案を通すといっている重大な情勢に対して、憲法改悪を許さぬ当面の重要なたたかいとしてこれを位置づけ、全力をあげなければなりません。教育基本法闘争をたたかい抜いた力をさらに広げ、何としても改憲手続き法案を阻止しましょう。
 
 第5は、教職員にとっての憲法闘争は、憲法9条を守れという課題のみならず、教育の立脚点をより強固に、確かなものにするたたかいという重要な意味を確認することができたことです。
 この間の教育基本法闘争をとおして、憲法と教育のいとなみとの関係が大いに語りあわれ、学習されました。私たちは、教育のいとなみは、憲法第13条(個人の尊厳と幸福追求の権利)、第19条(思想・良心・内心の自由)、第23条(学問の自由)第25条(生存権)、第26条(国民の教育権)等に源を求めることができることを学びあいました。ここから、教職員にとっての憲法闘争は、教育のいとなみの立脚点をより強固に、確かなものにするたたかいであるという重要な位置づけを行うことができました。したがって、憲法闘争における教職員の果たすべき役割は、一段と重要です。全力をあげてこの歴史的使命を果たそうではありませんか。
 もちろん、これらをすすめていくうえで、課題も残しています。この間の教育基本法闘争に、立ち上がることができなかった職場もあり、立ち上がることができなかった組合員、教職員がいたことも事実です。直面する歴史的な憲法闘争に、文字どおりすべての職場、組合員、教職員が立ち上がる状況をつくりあげることは、もっとも重要な課題です。常に、職場がどうなっているか、職場教職員の要求や悩みはどこにあるのか、に目を注ぎ、多忙化のもとで、なかなか課題が見えにくくなっている組合員一人ひとりにていねいに話しかけ、働きかけ、たたかいへの立ち上がりをうながすとりくみを、もっと意識的にすすめましょう。そうすれは、組合員、教職員の力をもっと引き出し、職場の底をついたとりくみをすすめることができます。立ち上がりきれない職場や組合員、教職員を残したということは、逆に言えば、すべての職場から組合員、教職員が立ち上がれば、さらに強大なエネルギーを発揮することができ、さらに壮大なたたかいを展開することができるという大きな可能性を示しています。職場のもつエネルギーに信頼し、大きくとりくみを発展させましょう。
 

2.憲法と教育のいとなみに立脚してとりくみをすすめることのもつ重要な意義

(1)憲法に立脚することの根拠
 憲法に立脚するとは、どういうことでしょうか。それは、単に「教育基本法が改悪されたが、憲法がある」という位置づけではありません。上述したように、教育の条理の根拠は、憲法に求めることができます。旭川学テ最高裁判決の最大の意義は、憲法的原理から教育の条理を導き出しているところにあります。教育基本法は「われらは先に日本国憲法を確定し」と述べ、「憲法の理想の実現は根本において教育の力にまつべき」としていましたが、このことの意味は、憲法と教育基本法が一体であるということにとどまらず、憲法の諸条項、とりわけ第13条、19条、23条、26条が教育に要請するものを、教育に関わる根本法として確認、確定したということを意味します。先に述べた旭川学テ最高裁判決もこれを確認しているのです。
 討議資料には、教育のいとなみの本質は、憲法の中に包み込まれている、と述べましたが、それは、このことを意味します。改悪教育基本法は強行されましたが、憲法と教育基本法=教育は一体という基本性格は変わらないし、変えようがありません。したがって、私たちは、憲法に立脚するというとき、それは、教育を前進させるきわめて積極的な位置づけを行っていることを意味します。このことをお互いに確認したいと思います。
 
(2)教育のいとなみに立脚するという意味
 同時に、教育のいとなみに立脚する、とはどういうことでしょうか。それは、「法が教育を規定する」のではない、ということです。教育基本法は、きわめてすぐれた立派な法律です。私たちも、ずっと教育基本法にもとづく教育という言い方をしてきました。
 しかし、本質的には、教育基本法があって教育のいとなみがあるのではなく、人類が営々と築きあげてきた教育といういとなみがまずあって、その教育のいとなみの本質を教育基本法が法として確認してきたということです。つまり、法律にどう書かれようとも、教育のいとなみは厳然と存在するということです。
 教育のいとなみは、本質的に子どもの成長・発達を助けるいとなみであり、それは、子ども、父母・国民、教職員との直接的関係でいとなまれるものです。それは、人間が成長・発達し続ける存在であり、その成長・発達は、人間の集団の中で可能であるという人間存在の本質に由来するものです。
 この教育のいとなみの本質は、何人も、またどのような力をもってしても絶対に消し去ることができません。この教育のいとなみの力があったからこそ、国民の中に厳然と存在する憲法的力としっかりむすんで、半世紀以上にわたる憲法改悪、教育改悪攻撃をおしとどめてきました。この教育のいとなみの力があるからこそ、これからも教育改悪攻撃から子どもを守ることができます。
 いくら教育基本法を改悪しようとも、教育のいとなみが子どもの人格の完成をめざすいとなみであり、それは、国民との直接的関係でおこなわれるという本質を変えることなど、絶対にできないのです。教育のいとなみに立脚するということは、この教育に本質に根ざすということであり、それは、はかりしれない大きな力であるということです。
 

3.「参加と共同の学校づくり」は改悪教育基本法具体化との学校教育におけるもっとも重要な実践的対決点

 改悪教育基本法の眼目は、教育の目的の変質と、教育についての国家権力が無制限に介入できるしくみづくりです。だから、「国民全体に対し直接に責任を負って」を削除し、「不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律にもとづいて」を入れ込みました。したがって、学校教育における基本的対決点は、国家権力による教育目的の変質と教育に対するコントロールを許さず、教育の目的である子どもの人格の完成を目指す教育を国民全体に対し直接に責任を負ってすすめることにあることは、疑いありません。つまりそれは、「参加と共同の学校づくり」として具体化されるものにほかなりません。私たちは、これまでも、「参加と共同の学校づくり」は、政府・文部科学省による教育改悪攻撃との戦略的対抗軸、と位置づけてとりくみをすすめてきましたが、改悪教育基本法強行のもとで、「参加と共同の学校づくり」は改悪教育基本法具体化との学校教育におけるもっとも重要な基本的対決点となります。この意義を踏まえて、とりくみをすすめることが重要です。
 

4.「参加と共同の学校づくり」と固く結んで、教育についての国民的合意運動を

 同時に、安倍内閣は、改悪教育基本法の具体化としての全国一斉学力テスト押しつけ、学校教育法、教免法、地教行法改悪という教育関連3法案の今国会での強行をねらっています。そしてこれ以後も、33法案ともいわれる教育関連法の改悪をねらっています。これらについては、「学校づくり」の枠内にとどまらない国民的運動が求められるものです。したがって、教育課題である「参加と共同の学校づくり」とともに、教育についての国民的運動が必要であることは言うまでもありません。
 これを踏まえ、全教は、「参加と共同の学校づくり」と固く結んで、教育についての国民的合意運動を、と提起していますが、それは、教育基本法闘争の到達点を踏まえたもっとも正確で、相手の攻撃と正面から切り結ぶ方針であることを強調しておきたいと思います。

5.具体的なとりくみ

(1)「参加と共同の学校づくり」
 教育のいとなみは本質的に「参加と共同」を要請します。教育・子育ては、子どもと教職員、子どもと父母、父母と教職員、それぞれの双方向的、対話的関係のなかでいとなまれるものです。また、子どもは集団の中で成長・発達するものであり、その子ども集団に対応して教職員集団が存在します。父母もまた、集団的な存在です。それゆえ、教育は集団的いとなみであり、共同はその本質といえます。したがって、日常の教育実践、教育活動の中に「参加と共同」の契機は間違いなく存在しています。そこに光をあて、意識的なとりくみをすすめましょう。そのカギは、「その気になって、その目で見る」ことです。それぞれがすすめている教育活動の中に存在する共同の契機に少し光をあて、少し工夫すれば、だれでも、どの学校でも「参加と共同の学校づくり」をすすめることができます。そして、それは、教室から、家庭科室から、音楽室から、保健室から、事務室から、どこからでも発信することができます。
 教室では、学級懇談会がポイントとなります。これまで「教育のつどい」レポートなどの全国の実践を見ても、学級での懇談会の充実を契機にして、それが他の学級や学年に「飛び火」して、学校全体のとりくみとなったとりくみは、数多く報告されています。日常の教育実践で子どもの声に耳を傾け、子ども理解をすすめ、自らが把握した子どもの声を懇談会で話せば、それは、子ども参加であり、父母と教師が話し合うことはすなわち共同です。授業や教育活動をとおして、子どもの声にしっかり耳を傾けることは、誰でもできるし、やっていることではないでしょうか。父母との懇談会も、誰でもやっていることだと思います。ここを出発点に、学校づくりをすすめましょう。
 その際、PTAを重視し、PTAの中で丁寧に話し合うことが大切です。PTAは、ほとんどの学校に存在しています。学級PTA、学年PTAもほとんどの学校にあります。PTAは、それ自身、父母と教職員が話し合う場です。この積極的な意味を踏まえてとりくむことが重要ではないでしょうか。
 また、年度末反省や年度はじめの学校教育目標決定などは、「参加と共同の学校づくり」をすすめるチャンスです。教職員が職員会議などで、議論することは大変重要なことです。これ自身教職員の共同の重要課題であるといえます。同時に、年度末反省に、子どもの声を反映させたり、父母の意見を聞き、反映させることは、少しの工夫と少しの努力で可能です。同様に、学校教育目標についても、教職員で話し合った学校教育目標を子どもに示し、直接意見を聞くことなども、小学校高学年以上ならば、可能だと思います。また、教職員で議論した学校教育目標を父母に示し、意見交換することも、工夫次第で可能です。それは、そのまま「参加と共同の学校づくり」のとりくみとなります。これを行うことによって、学校がすすめている教育活動の到達点をより客観化することができ、学校の教育方針を教職員と子どもと父母とで共有し、共通の目標で教育活動をすすめるための重要な前提をつくることができます。年度末、年度初めという条件を生かして、とりくみをすすめましょう。
 
(2)教育についての国民的合意運動
 当然のことながら、教育についての国民的合意運動とは、全教の考え方を父母や地域住民、諸団体のみなさんに押しつけることではありません。子どものすこやかな成長を願うという一致点にもとづいて、子どもの成長をどう育むかについて、教職員が、地域で住民とともに、お互いが考えを出し合い、文字どおり合意をつくることです。この観点をしっかりもってとりくみましょう。
 そしてそのとりくみをできるだけ幅を広げて行いましょう。この間、各地でとりくまれたキャラバン行動をとおしても、地方教育行政との対話、懇談が精力的にすすめられました。各地から、地方教育行政とも一致点が広がっているという報告が多く届けられています。また、後ほど特別報告されますが、財界に身を置く人々とも教育の条理では一致点が生まれます。教育の条理の力は、それほど大きなものなのです。
 まず、もっとも身近な地域から、とりくみをはじめましょう。そのため、地域での教育懇談会活動をあらためて重視する必要があります。教育基本法闘争の重要な教訓は、地域・草の根から運動が広がったことです。これを日常化しようではありませんか。それをすすめるためには、この間共同と連帯を深めた地域労連や新婦人をはじめ民主団体のみなさんに連絡をとればすぐにできることです。これも後ほど特別報告される予定ですが、いま、地域から教職員が待ち望まれています。まさに、打てば響くという状況にあるのではないでしょうか。
 組合員、教職員の中には、かつて教育懇談会にとりくんだ経験をもっている人はたくさんいるはずです。その経験を生かし、あらためて地域で懇談会活動にとりくみましょう。またそれを若い先生方にも継承しましょう。それは、むずかしいことではなく、青年教職員といっしょに教育懇談会に参加すればよいのです。そのとりくみは教職員集団づくりに直結するし、青年教職員の成長にも大変役立つものとなるに違いありません。
 地域教育懇談会活動は、できれば、中学校区単位、小学校区単位とできるだけきめ細かい単位ですすめることが重要です。そうすれば、「参加と共同の学校づくり」と固く結ぶことができます。いま、話し合う材料にはことかかない状況にあります。とりわけ、当面の「全国一斉学力テスト」問題は重要課題です。個人情報を文部科学省と受験産業がすべてにぎる、という問題は、学力テストは必要なのではと考えている父母でも、これはおかしい、と思えるような中身です。この問題で話し合えば、必ず共同が広がります。この地域における教育行イ運動も、少しの努力とすこしの工夫でできることです。
 職場を基礎に、そうしたとりくみをすすめつつ、各県組織執行部は、都道府県教育委員会との対話、懇談をすすめましょう。単組・支部は市町村教育委員会との対話、懇談をすすめましょう。政府による地方切捨ての政策は、中央政府と地方行政との矛盾を大きく広げています。また、政府・文部科学省のすすめようとしている教育政策と地方教育行政との矛盾も大きく広がっています。教育改悪3法案、とりわけ地教行法改悪に対する地方教育行政の怒りは大変大きいものがあります。中央集権をすすめる地教行法改悪については、全国都道府県教育長協議会・教育委員長協議会が、文部科学省と教育再生会議に対し、異例の意見表明を行いました。大きな構えでとりくみをすすめましょう。 そうした共同のとりくみを地域・草の根からの運動とむすびつけましょう。
 そうした教育についての国民的合意運動を「参加と共同の学校づくり」と結んですすめることが重要です。「学校づくり」という教育課題と、教育についての国民的合意運動という運動課題を正しく区別し、正しく関連させることが求められます。すでに述べたように、「学校づくり」はきわめて重要な課題です。しかし「学校づくり」だけではたたかえません。教育についての国民的合意運動も重要です。しかし、運動だけでは、教育はかわりません。だから、結びつけることが必要なのです。学校づくりと地域・草の根からの運動を結びつけることによって、教育を国民的に前進させ、運動を国民的に発展させることができます。この見地を堅持して、とりくみをすすめましょう。

6.当面の「全国一斉学力テスト」押しつけ反対、教育改悪3法案阻止のたたかいについて

(1)「全国一斉学力テスト」押しつけをゆるさぬたたかい
①「全国一斉学力テスト」の本質的問題点
 安倍内閣は、イギリスで行われた「サッチャー改革」をモデルに、「全国一斉学力テスト」の実施とその結果公表、これに「学校選択の自由」の全国的拡大を組み合わせ、政策的に子どもの集まる学校、集まらない学校をつくりだし、「外部評価」の名のもとに、「教育査察局」をつくって学校教育に介入、干渉し、学校をしめあげて、あげくのはては、学校をつぶすというきわめてよこしまなねらいをもったものです。これは、子どもたちをいっそう競争に追いたて、追いつめるとともに、子どもと学校の格差づくりという重大な問題点をもつものです。
 
②新たに明らかになった憲法にも抵触する個人情報問題
 文部科学省は、「全国一斉学力テスト」を小学校はベネッセに、中学校は旺文社グループと連携しているNTTデータに丸投げして実施しようとしています。すでに大会でも報告したように、小学校では、固有名詞を書かせて教科の解答用紙と「質問紙」の回答用紙を集約し、中学校では、個人が特定できる出席番号を書かせて集約するというやり方をとろうとしています。
 しかも、「質問紙」では、「予備調査」をみると、「朝食を毎日食べているか」「1日あたりどのくらいの時間テレビを見ているか」「家には本は何冊くらいあるか」「家にコンピュータはあるか」「家の人は学校の行事によく来るか」というプライバシーにかかわる質問に加え、「1週間に何日塾に通っているか」「学習塾では学校より難しい勉強をやっているか」「おけいこ事に通ったことがあるか」など受験産業にとってほしくてたまらない情報にかかわる質問もなされています。まさに、プライバシーの権利、内心の自由など、人権侵害にあたる重大な内容です。
 実はここに全国一斉学力テストの本質があらわれています。
 私たちは、全国一斉学力テストは、子どもたちに対するいっそうの競争と管理を強め、子どもたちをテストの点数によって序列化し、教育の格差づくりをすすめるものであると、厳しく批判してきました。
 子どもたちを序列化するには、国語や算数・数学の点数を固有名詞で把握しなければできません。固有名詞でそれを把握することによって、全国約240万人の子どもたちをすべて点数で序列化することが可能となり、必要に応じて、都道府県ごとに、また市町村ごとに、子どもや学校を序列化することも可能となります。この実施方法そのものが、全国一斉学力テストが学力向上のためではなく、子どもたちを序列化し、管理するという本質の露呈にほかなりません
 また、この全国一斉学力テストは、改悪教育基本法の最初の具体化です。改悪教育基本法について私たちは、これを「戦争する国」の人づくりであるとして、これも厳しく批判してきました。子どもたちの家庭状況も含んだ個人情報を民間企業と行政機関がすべて把握するという、今回の大問題は、戦争準備の施策にほかなりません。国家が国民を支配して戦場に送り込むためには、国民総背番号制ともいわれるように、国家が国民一人ひとりの情報を把握する必要が出てきます。今回のやり方を数年間続けて行えば、行政権力が未来の主権者のほとんどの個人情報を把握することができるものであり、大問題です。事実アメリカでは、「落ちこぼれゼロ法案により貧困地区の高校生のリストを手に入れた軍のリクルーターたちが、前線へ送られないことと引きかえに、必死になって貧しい子どもたちを軍に勧誘していた」(クレスコ1月号 堤未果氏)とされていることからも、現実的危険がある問題です。
 
③今後のとりくみ
 上記の重大な問題点をもつ「全国一斉学力テスト」に対するとりくみについては、すでに2月22日付で各組織あてに、要請文書を発出しており、そこに譲りますが、父母・国民にこの重大な事実がほとんど知らされていないのが現実です。事実を知ったところでは、これは大問題という認識が広がり、父母・国民が自主的な立ち上がりを見せています。全教は、「全国一斉学力テスト」についてのビラを緊急に100万枚作成しました。いま何よりも重要なことは、父母・国民に対して、正確な情報提供をおこなうことです。とりわけ、PTAを重視し、都道府県段階のPTA連合会への申し入れ、懇談、市町村PTAへの申し入れ、懇談、各学校から単位PTAへの申し入れ、懇談を重視してとりくみをすすめることが重要です。
 同時に、実施主体である市町村教育委員会に問題提起し、あらためて自主的判断を求めるとりくみをすすめることを重視しましょう。
 現時点では、「全国一斉学力テスト」への不参加を表明しているのは、愛知県犬山市のみですが、この自主的決定を励ますためにも、全国各地から火の手をあげることが重要です。力を入れてとりくみましょう。
 
(2)教育改悪3法案阻止のたたかい
①教育改悪3法案の反動的本質
 安倍内閣は、改悪教育基本法と1月24日に出された教育再生会議第1次報告の具体化のために、教員免許更新制導入のための教免法改悪、中央集権的教育行政をすすめるための地教行法改悪、改悪教育基本法第2条具体化と副校長、主幹を法律に位置づけ、教職員へのいっそうの管理統制強化をすすめるための学校教育法改悪という、3つの法案を今国会に提出しようとしています。これは、改悪教育基本法具体化そのものであり、重大です。
 まず学校教育法については、第1に改悪教育基本法第2条に「国を愛する態度」を入れ込んだことを根拠に、小学校や中学校の目標に同様の目標を入れ込み、改悪教育基本法と学校教育法を根拠に、「愛国心」押しつけを強化しようとするものです。しかし、改悪教育基本法をめぐる国会論議で明らかになったように、これを憲法第19条が規定する思想、良心、内心の自由に対する重大な侵害です。これを強行しようとすれば、あらためて憲法との関係で根本矛盾が露呈せざるをえません。第2は、副校長、主幹、指導教諭の新たな職を学校教育法第28条に位置づけ、新たな上意下達の体制をつくって、教職員への管理統制を強めようとするものです。しかしこれも、教育の条理との関係で大きな矛盾を引き起こします。
 教免法については、教員免許更新制を導入するためです。これは、時の政府のいいなりにならない教員の教壇からの排除をねらうものであり、改悪教育基本法をになう教員づくりという本質を持ちます。しかし、これまでの政府・文部科学省の政策は、教員免許をないがしろにし、教員免許なしに教壇に立てる制度などをすすめてきており、政策的に根本矛盾をもちます。それゆえ、制度設計そのものが成り立たず、支離滅裂になる可能性がきわめて大きいものです。
 地教行法については、一方で「地方分権」を言いながら、都道府県の教育長の人事にまで国が関与できるしくみをつくり、中央集権的教育行政による教育の国家統制をすすめようとするものであり、重大問題です。
 
②現時点の教育改悪3法案をめぐる情勢―異例づくめの中教審審議
 安倍内閣は、中教審での審議を急がせ、答申を出させようとしており、中教審は、2月25日の日曜日、3月3日の土曜日にも会議を開催するという、かつてない異常な対応を行っています。朝日新聞では、「中教審〝猛審〟」とその状況を揶揄しています。また、この問題でのパブリックコメントを募集しましたが、通常30日間の期間を設けるところをわずか1週間という短さです。さらに、2月28日には全教も含め各団体からのヒアリングを行いましたが、これも2室で同時並行ですすめるという異例の事態です。
 しかし、これほどまでしても、まだ中教審の審議はまとまらず、当初予定を大幅にずれ込む事態となっています。安倍内閣は、中教審に3月3日には答申案を出させ、急いで法案化して3月15日には国会提出という予定を組んでいました。ところが、とりわけ地方教育行政にかかわって、先に述べたように、都道府県教育長協議会、教育委員長協議会が文部科学省に対し、異例の意見表明を行い、ヒアリングでも市町村長会の代表も、国の権限強化には、反対の意見表明を行いました。マスコミでも、異論続出と報道されています。
 さらに、わずか1週間のパブリックコメントでしたが、325件の意見が寄せられ、その圧倒的多数が、教育改悪3法案に反対の立場からの意見表明でした。この意見はすべて、ヒアリング当日、中教審委員に配布されました。
 しかし、中教審は、これも異例の土曜日である3月10日に総会を開催して審議を終了し、答申案をまとめる予定であることが報道されており、教育改悪3法案の今国会提出の可能性が高まっています。
 全教は、中教審のヒアリングにおいて、憲法と教育のいとなみの本質に立脚して論を組み立て、教育改悪3法案に対して正面から反対の論陣を張りました。そして、3月6日の中央行動では、この問題での独自の国会議員要請をおこない、出足早くとりくみをすすめています。
 
③今後のとりくみ
 今後のとりくみの第1は、国会闘争を強化することです。すでにいくつかの組織で文部科学省に対し、憲法と教育の条理に背く学校教育法、教免法、地教行法の改悪作業を中止せよという要請の集中がとりくまれていますが、国会に舞台を移す可能性の高まりに対応して、全教は、請願署名のとりくみを緊急に行います。また、教育基本法闘争でも精力的に行ったように、国会議員に対するFAXやメールの集中などの働きかけを思い切って強化します。また、4月12日に予定している中央行動では、直接国会議員要請を大規模に展開する予定です。各組織で、ぜひ積極的に対応してください。
 第2は、「全国一斉学力テスト」押しつけをゆるさぬとりくみと一体に、教育改悪3法案の重大な問題点を父母・国民のみなさんに知らせ、幅広い国民世論をつくりあげることです。この間の教育基本法闘争の到達点を踏まえ、いっそう広げることが重要です。
 第3は、上記のとりくみをすすめるために、緊急に、組合員、教職員に教育改悪3法案の重大な問題点を知らせ、反対の職場世論をつくりあげることです。当面、中教審での全教の意見表明やこの基調報告も活用してください。そのために、忙しい中でも職場で集まって語り合うことが大切です。みんなが自分の思いを出し合うことによって、同僚や父母に、自分の言葉で語りかけることができるようになります。ぜひ、短時間でも職場で集まる時間をとってみんなで語り合いましょう。なお、全教は、緊急に討議資料を作成し、職場に配布する予定です。これも大いに活用してください。
 これらのとりくみを重層的、相乗的にすすめ、教育改悪3法案を何としても阻止しましょう。  

7.政治戦での決着を

 来月には一斉地方選挙が行われ、7月には、参議院選挙が行われます。いよいよ重要な政治戦の火蓋が切って落とされます。教育基本法闘争は、安倍内閣に緒戦で強烈なカウンターパンチを浴びせました。安倍内閣の支持率は続落し、4つのマスコミ調査では、不支持が支持を上回っています。この世論をつくりあげるうえで、教育基本法闘争はきわめて重要な役割を果たしました。
 教育基本法闘争は、まさに壮大な到達点を築きましたが、国会内に教育基本法改悪を許さぬ勢力がもっと多数あれば、という悔しさを感じたのも事実です。
 一斉地方選挙、参議院選挙で改悪教育基本法を強行した勢力、憲法改悪勢力に大打撃を与えましょう。それは、教育を国民的に前進させるとりくみにとって重要なだけではなく、憲法改悪を押しとどめ、貧困と格差づくりの中で苦しむ父母、子どもたちを救い出す世の中をつくるうえでも重要です。
 教育を国民的に前進させるとりくみ、憲法改悪を許さぬ国民的大運動、そして選挙によって世の中を変えるとりくみを一体のものとして、全力をあげましょう。

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