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〈2024年4月号 3月20日発行〉

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全教、新「防衛計画の大綱」の閣議決定に抗議する談話を発表

 全教は12月17日、菅内閣が新「防衛計画の大綱」を閣議決定したのを受けて、「憲法の平和原則を破壊する新「防衛計画の大綱」の閣議決定に抗議する」との北村書記長談話を発表しました。


【談話】憲法の平和原則を破壊する新「防衛計画の大綱」の閣議決定に抗議する
                                2010年12月17日 
                                全日本教職員組合(全教)
                                書記長  北村 佳久 

 12月17日、菅内閣は、新「防衛計画の大綱」を閣議決定しました。その内容は、憲法上の歯止めを無視し、自衛隊の海外派兵の恒久化、海外での武力行使の拡大、海外派兵型装備のいっそうの強化をねらうものであり、断じて許すことはできません。
 「大綱」の特徴の第1は、「基盤的防衛力」という自衛隊の従来の方針を転換し、「動的防衛力」という名で自衛隊を攻撃型部隊に変えようとしていることです。基本方針で、アジア太平洋地域ばかりか「グローバルな安全保障環境」のための活動を防衛力の役割とし、「国際平和協力活動」での自衛隊の機動力を強化するとして、機動運用部隊の保持、護衛艦・潜水艦・新型戦闘機などの装備の強化などを計画しています。これは、海外派兵恒久法の制定、集団的自衛権の行使、PKO参加五原則の武器使用基準の見直しと一体の動きであり、そのねらいが、アメリカとともに海外での戦闘に自衛隊を参加させ、武器使用を可能にさせることにあることは明らかです。憲法9条の「武力行使の放棄」「交戦権の否定」に反する違憲行為は、認められません。
 第2の特徴は、「武器輸出三原則の見直し」は明記しなかったものの、防衛装備品の他国への供与、国際共同開発・生産への参加について検討するとしていることです。これは、武器の販売で金儲けをたくらむ財界の要求を受け入れたもので、平和産業から軍事産業中心に日本の経済をゆがめる重大な問題であり、許せません。
 第3の特徴は、非核三原則を守るとしながら、「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠」と述べ、その「維持・強化」に協力し、弾道ミサイル防衛にとりくむなどとしていることです。これは、核持ち込みの「密約」を事実上公認するものであり、東アジアの緊張をいっそう高めることにしかなりません。日本は、被爆国として、米軍の「核の傘」から離脱すべきです。
 新「防衛計画の大綱」により、軍事的・経済的な覇権を求める財界と米国の強い要求に押され、アメリカに従属した軍事大国化に日本を踏み出させることは、許せません。

 菅内閣は、「大綱」と一体に、総額23兆4900億円の中期防衛力整備計画(2011年度から5ヵ年)を了承しました。欧米の主要国が軍事予算を減らしているときに、民主党政権が2010年度の防衛予算を増額させ、今後も毎年約5兆円の軍事費を使い続けることは、軍縮の動きに逆行するものです。また、在日米軍駐留経費は、2010年度に7千億円をこえ、その中には日本が支払う義務のない「思いやり予算」1881億円が含まれています。菅内閣が、この「おもいやり予算」を今後5年間延長することをアメリカと約束したことは異常です。
 こうした軍事予算が、くらしや教育のための予算を圧迫していることが、予算編成を通じていっそう明らかになりました。政策コンテストで、米軍の「思いやり予算」は無条件で認めながら、35人学級計画の予算を削ったことに、怒りの声が広がっています。来年3月で期限切れとなる「思いやり予算」の特別協定を廃止し、防衛予算を減額して、くらしと教育を支える予算を増額すべきです。

 全教は、憲法9条を守り生かす立場から、「大綱」の閣議決定に抗議し、その具体化を許さぬ決意を表明するとともに、アメリカ言いなりの防衛・外交の大本にある日米安保条約の廃棄を強く要求するものです。

以上

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