『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年4月号 3月20日発行〉

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【談話】『新政権による2010年度文部科学省概算要求に対する談話』

                   2009年10月21日 全日本教職員組合 書記長 北村 佳久

 2010年度政府予算に対する概算要求再提出は、10月15日に締め切られました。一般会計がマニフェストで掲げた施策を優先的に上積みしたため過去最大の95兆381億円となり、09年度当初予算88兆5480億円に比べ、約6兆5000億円上回っています。さらに、「事項要求」として予算編成過程で検討する項目も残されており、今後その規模が拡大していくことも想定されます。一般歳出は54兆9929億円(09年度当初予算比6・3%増)、国債費は21兆8933億円(8・1%)で、税収の落ち込みも言われている中、大幅国債にたよらざるを得ない予算編成になることが懸念されます。米軍再編費など軍事費を聖域とせず大幅に削り、大企業優遇の税金の使い方の抜本的改革が求められます。


 文部科学省の概算要求については、一般会計で5兆7562億円、09年度当初予算比で4745億円(8・9%)増となっています。私たちの運動と世論の高まりを反映して、「高校の実質無償化」に向けて大きく踏み出したものとなっています。さらに、「教員免許制度」の見直し、「全国的な学力調査の実施」を抽出調査にすることを打ち出しています。これも全教が、改悪教育基本法の具体化である教員免許更新制、全国学力調査の問題点を指摘し、廃止・中止に向けて父母・国民とともに大きく運動をくり広げた成果です。
 
 全体像は不透明ですが、現時点における特徴とその問題点は、次のとおりです。第1に、教育にかかる国民の負担を軽減するために、「幼稚園就園奨励費補助」の大幅増とともに、マニフェスト工程表関係事項として「高校の実質無償化」に4624億円(新規)をあげています。その内容は①「国公立高校生のいる世帯に対し、実質的に授業料を無料にするとともに、私立高校生などのいる世帯に対しても同等額の助成」に4501億円、②「高校奨学金事業等(給付型奨学金など)の充実・改善」に123億円計上し、「入学時に必要な経費(入学料、教科書など)を対象とする就学支援策を付加的に行う」としました。これらはこの間の貧困と格差拡大から子どもたちを守る私たちの運動の成果であるとともに、憲法26条「すべての国民は、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有する」を保障する歴史的な第1歩と言えます。しかしながら、「高校奨学金事業」については8月の概算要求額と比べると3分の1以下に削られていますし、今後さらにすべての高校生を対象にした教育費無償をめざすようとりくみを強めることが重要です。
 
 第2に、抽出調査(抽出率40%)に切り替えて実施するとして「全国的な学力調査の実施」に前年度予算から21億円減の36億円を計上しています。子どもたちと学校を競争に駆り立てる全国一斉学力テストは「抽出でじゅうぶん」と批判の声があがっていたもので、これも私たちの運動の成果です。しかしながら抽出率を40%としていること、設置者が希望すれば調査を利用できるようにすること、さらに教科の追加などについて検討するための調査費を計上していることは重大な問題です。
 
 第3に、教員免許更新制に関連して、「教員の養成課程を6年制とすることを含め、教員免許制度を抜本的に見直す検討に着手するために必要な調査等を行う」として3億円計上しています。新聞報道では、教員免許更新制は2010年度限りで廃止としていますが、多くの教育関係者から問題点が指摘されているもので、一刻も早く廃止すべきです。
 
 第4に、義務教育費国庫負担金では、現場の要求からほど遠いものの5500人の教職員定数の改善のために、1兆6380億円を計上しています。その内容は、8月概算要求の中にあった「主幹教諭のマネジメント機能の強化」として2500人挙げていたものを448人にとどめ、「理数教科の少人数指導や特別支援教育の充実など」のための教職員を増やす内容となっています。また、「新学習指導要領先行実施における理数教科の授業時数の増に対応するため」、退職教員や社会人など1万9500人(週12時間換算)の配置を拡充としていますが、学校現場では正規教職員の配置が望まれています。
 
 全教は、2010年度予算編成にあたっては、国民の声を聞いて編成するよう新しい政権に求めつつ、教育全国署名をはじめとした「5大重点要求」実現の運動に、全国の教職員・父母・地域住民のみなさんとともに全力を尽くして奮闘する決意を表明するものです。

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