『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年10月号 9月20日発行〉

【特集】教職員の長時間労働と「中教審答申」を問う

  • 全教共済
オピニオン

【声明】『2009年人事院勧告について』

                     2009年 8月11日 全日本教職員組合 中央執行委員会

1.人事院は本日8月11日、一般職国家公務員の給与等の勧告と報告を行いました。
 賃金に関しては、民間との較差が「マイナス0・22%、マイナス863円」であったとして、若年層など一部を除いて平均で0・24%の月例給マイナス改定に踏み切ったうえ、一時金も過去最大の0・35月引下げるとする勧告を行いました。国家公務員の平均年間給与は、15・4万円もの大幅引き下げになります。これは、平均年間給与を16・5万円引下げた2003年度に次ぐ大幅引下げです。
 
 いうまでもなく、公務員賃金の水準は、全国の公務員だけでなく、地域での給与水準において「標準性」を持っており、地域経済にも大きな影響を与えるものです。
 
 人事院は、民間との較差を絶対的な基準として引下げ勧告を強行しましたが、法の趣旨である生計費原則に立つならば、全国消費者物価指数(CPI、2005年=100)が100・3と上昇しているにもかかわらず一時金を引下げ、さらに月例給も引下げるということに道理はありません。勧告ルールを無視した異例の5月臨時勧告により、0・2月分の夏季一時金凍結を強行したうえで、賃下げを実施することは、労働者の犠牲で経済危機を乗り切ろうとする財界・大企業の論理と同じものです。公務員の労働基本権制約の代償機関としての自らの役割を投げ捨て、政治的圧力に屈して、「公務員総人件費抑制」という「構造改革」路線に沿ったものとして、絶対に認めることはできません。あらためて公務員の労働基本権の全面的な回復を要求するものです。
 
2.手当関係では、持ち家の住居手当が廃止されました。国家公務員において、この手当は財形持家個人融資のために措置されていたものです。しかし、官舎の完備率が低い地方公務員・教職員においては、実際の生活給として支給されてきた経過があるものです。支給根拠が国と地方で異なる以上、国段階で自宅の住居手当が廃止されたからといって、地方人事委員会が同調する必然性はまったくありません。
 
 また、私たちの粘り強いたたかいで、非常勤職員についての休暇や健康診断等の改善がありました。引き続き、「官製ワーキングプア」の解消をめざす立場から、「均等待遇」をめざした抜本的改善を強く要求するものです。 
 
3.超勤縮減の具体化として、労働基準法の改正を受けた時間外勤務手当率の引上げ等が実施されることは、不十分とはいえ前進です。しかし、学校現場における教職員の長時間過密労働に対する改善施策はすすんでいません。恒常化している長時間過密労働は、急増する精神性疾患の温床ともなっており、その是正は喫緊の課題です。 
 
4.全教は、全労連公務部会に結集し、夏季闘争をたたかいました。すべての労働者の賃金底上げをめざす最低賃金引き上げ闘争を一体にしてすすめながら、人事院に対しては、賃金改善を要求する「職場連判状」4万3452筆、団体署名1938筆を集約し、中央行動をはじめとする諸行動にも積極的に参加し奮闘しました。最終盤では、分会・支部・単組からの750通もの緊急要請FAXが、人事院総裁宛に届けられました。

 09春闘をとおして大きな運動になった「派遣きり・期間工きり」を許さないたたかいの高揚と広がりは、大企業が経済不況による企業収益の悪化の結果を労働者に押しつけ、内部留保を取り崩さずに労働者の雇用破壊と賃下げによって乗り切ろうとするやり方と真正面からぶつかり合う状況を生みました。こうした中で強行された夏季一時金凍結の攻撃は、政府・与党による政治的な思惑と同時に、官民分断による賃下げ攻撃でした。これに対して、「人勧、最賃、底上げ・均等待遇」を一体としてたたかってきた私たちのとりくみとして、いち早く民間労組との共同のたたかいを広げることができたことは大きな前進でした。夏季闘争をすすめる中で、共同の輪がさらに広がり、「貧困と格差から子どもを守ろう」と、7月23日には、教職員以外の104名の参加者を含めた総勢697名もが文科省前行動に結集し、その後の日比谷野音集会が3000名の大行動として成功したことは、今後のたたかいにむけた大きな確信となりました。野党各党がマニフェストにおいて、最低賃金1000円をめざすとしているのも、この間の運動の反映です。
 
 「貧困」を打ち破ることをめざした共同のたたかいの前進が、最終的に官民較差がマイナスのもと、非常勤職員の賃金基準になっている初号俸や初任給をはじめとする若年層の賃金切り下げを阻止する力となったことは明らかです。
 
 全教は、あらためて政府に対し、生計費にもとづく賃金改善を行うことで、公務員労働者はもちろんのこと、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を果たすことを強く要求し、その実現のために民間労働組合や民主団体との共同のたたかいをさらにすすめていくものです。 
 
5.今次勧告において、2005年以来2度目となる地域ブロック別官民較差が公表されました。今後、政府は、地方に対して国家公務員に準じた措置とともに、「地域の民間給与の更なる反映」を強く指導していくことが予想されます。地域ブロック別官民較差の公表が、地方においては賃金引き下げ圧力として強く影響することが危惧されます。地方確定闘争に向け、疲弊させられている地域経済における人事委員会勧告の社会的影響を広く訴え、人勧制度を否定する独自カット問題をはじめ、地域格差拡大に反対する運動をさらに強化することが求められています。
 
6.教員給与については、2・76%削減が決まっているもとで、「義務教育等教員特別手当」の2年連続となる削減と障害児学級・学校の調整額の削減が政府予算に盛り込まれています。こうした賃下げが強行されると、教職員にとっては2003年を上回る過去最大の年収引下げとなります。
 
 合わせて、新たな職の設置や評価結果の処遇へのリンクも広がりをみせています。私たちは、CEART第4次勧告で「昇給とボーナスに関わる業績評価制度の今後の設計と実施を、教員を代表するすべての教員団体との誠実な協議と合意のもとで行うよう、すぐに措置を講じるべきであると勧告」されたことにもとづいて、文科省と地方教育委員会に引き続き改善を求めていくものです。
 
7.いよいよ総選挙です。全教は、この選挙で、自公政権を終わらせ、この間の「構造改革」路線にストップをかけ政治の流れを変えることを、すべての教職員に訴えるとともに、総選挙勝利をめざしたたたかいに全力をつくします。同時に、引き続き、憲法と教育、国民のいのちと暮らしを守るたたかいと結合し、教職員賃金水準の確保と均等待遇の実現、地域格差拡大反対、教職員諸手当の見直し改悪反対、差別賃金制度の導入阻止のため、全力でたたかう決意を表明するものです。  

                                              以上
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