『クレスコ』

現場から教育を問う教育誌

クレスコ

〈2024年4月号 3月20日発行〉

【特集】「せんせい」になったあなたへ2024

  • 全教共済
オピニオン

【談話】『民間賃金引下げに直結する、政治圧力に屈服したルール違反の人事院による夏季一時金の一部支給凍結「勧告」に抗議する』

                     2009年 5月 1日 全日本教職員組合 中央執行委員会

.人事院は、5月1日、私たちの反対を押し切って実施した4月7日から24日までの民間調査にもとづき、本年6月支給予定の夏季一時金について、0・2月分、平均で7万7000円を上回る支給凍結を「勧告」しました。この間、人事院は一貫して情勢適応原則にもとづいた調査であると強弁してきましたが、そもそもの火種が自民・公明両党のプロジェクトチームによる一時金引下げの動きであり、これまでの賃金決定ルールを乱暴に踏みにじったという異例の経過をみれば、本日の「勧告」が、人事院にとって公務員の労働基本権制約の「代償機関」としての役割を自ら投げ捨て、政治的圧力に屈服した理不尽なものであることは明らかです。全教は、人事院の「勧告」に断固抗議するとともに、政府が拙速に給与法改定に向けての閣議決定等を行わず、労働組合との誠実な交渉の席につくようもとめるものです。


4月28日、人事院前で行った緊急の要求行動で「勧告するな」とシュプレヒコールをあげる全教の参加者

.労働者の賃金は、本来、対等の労使交渉にもとづき、合意のうえで決定されるものです。しかし、日本の公務員労働者は、労働基本権が制約されているもとで、その代償措置としての人事院勧告制度によって、毎年5月から精緻な民間給与等の実態調査が行われ、その結果に準拠するよう賃金・労働条件が決定されています。実際、今年も5月1日から6月18日まで、1万1000社を超える企業を対象にした訪問・聞き取りによる調査が全国で始まりました。
 
 一時金については、2004年から前年の冬と当年度の夏における民間支給実態を7月まで調査した上で、8月の人事院勧告に反映されることになっています。これは、民間での一時金変動を迅速に反映させるためです。したがって、春闘での結果は、精緻な調査にもとづいて8月の勧告に反映されるべきものであり、それが労働基本権制約のもとでのルールです。人事院は、私たちの強い反対を押し切って4月調査を強行し、その結果を理由に「勧告」を行いましたが、調査の実態はわずか2700社への郵送調査であり、一時金が妥結したとして回答した企業はわずか340社に過ぎません。5月1日からの精緻な民間調査を始めるわずか1週間前に、形ばかりの調査を行ったこと自体が道理のないものですし、そこまでして勧告ルールを壊したことを厳しく糾弾するものです。
 
.あえて、4月に異例な調査を実施してまで夏季一時金の削減を強行しようとする政府・与党の思惑は、勧告ルールを無視した公務員賃金引下げの実績づくりという総選挙に向けたきわめて政治的・党略的なものであると言わざるを得ません。同時に、大企業が経済不況の結果を労働者に押しつけ、内部留保を取り崩さずに労働者の雇用破壊と賃下げによって乗り切ろうとしているやり方に手を差し伸べる者です。
 
 国民春闘共闘委員会は、4月21日、人事院に要請行動を行い、民間単産の委員長・書記長から「消費購買力は下がるし、政府の景気対策とも逆行する。直ちにやめてもらいたい」「(公務員の一時金という)目標としている社会的水準が下がれば全体が下がるし、消費も落ち込んでしまう」「すでに決まった一時金を引き下げることは契約違反、約束破りだ」と訴えられました。
 
 いま全国でたたかわれている09春闘では、中小企業のほとんどがまだ賃金闘争の真最中です。民間の夏季一時金闘争は、ほとんどが5月連休明けからですし、公務員の支給率を参考にしているところも少なくありません。こうした中で公務員の夏季一時金の削減が強行されるならば、当然、中小企業における夏季一時金闘争は大きな打撃を受け、また、7月に向けて検討される最低賃金の改定作業にも重大な影響を与えることは必至です。公務と民間の「賃下げの悪循環」は、日本経済を今以上に消費不況に追い込むことにしかならず、何としても打ち破らなければなりません。
 
.いま必要なのは、子どもたちにも深刻な影響を引き起こしている日本の労働者の貧困問題を改善することです。そのためには、すべての労働者の雇用が守られ、大企業が社会的責任を果たし、内部留保のほんのわずかを取り崩すことで実現できる、すべての労働者の賃上げこそがもとめられています。公務員賃金をめぐって、民間労働組合とともに全労連・国民春闘共闘規模でのたたかいに広がっていることは、この間の私たちのたたかいの大きな到達点です。この流れをさらに発展させて、最賃・人勧一体のたたかいへとつなげていきましょう。全教はそのために今後とも奮闘する決意を表明するものです。 

                                              以上

 

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