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【意見】『「へき地教育振興法施行規則の一部を改正する省令案」に対する意見』

 全教は、「へき地教育振興法施行規則の一部を改正する省令案」に関するパブリックコメントを文科省に示しました。


2009年 2月 3日 全日本教職員組合

 へき地指定基準の見直しのための「へき地教育振興法施行規則」の一部改正は、教育の機会均等・教育水準の確保を謳うへき地教育振興法の趣旨に基づいて行われることが重要です。この間、へき地における文化的・社会的条件が年々一定の変化が見られることは確かです。しかし、地方の過疎化はいっそう進行し、子どもたちに直接関わる文化施設、教育機関等の多くが都市部に集中し、都市部と地方の相対的格差は拡大しつつあるのが現状です。天候の荒れ次第では数日間孤立する離島の厳しさは変わりません。へき地教育振興法の趣旨に基づき、その実態を正確に反映されるへき地指定基準の見直しが求められます。
 また、自然条件だけでなく、生活面でも厳しい条件の下で働く教職員が、元気に働き続けられるよう「へき地手当」改善につながるへき地指定基準の見直しが必要です。
 
1.基本的な見解
 
 今回示された「概要」に基づくへき地指定基準の見直しが行われば、各地の学校の級地がダウンし、教育格差の拡大、教育条件の悪化が危惧されます。また、教職員のへき地手当の削減につながり、へき地教育に優秀な人材を確保することを困難にするものです。今回の「施行規則」の一部改正は、教育の機会均等・水準の確保、人材の確保を後退させる「改悪」であり、改善を求めるものです。
 
2.法の趣旨に基づくへき地指定基準の見直しとなるよう、以下の改善を求めます。
 
(1)基準に相応しい算定の要素にすること。
① 医療機関に加えられた「病院(旧総合病院を除く)までの距離」については、「特定機能病院までの距離」に改めるか、診療科目毎の配点とし、住民対医師数による補正を行うこと。
② 市町村合併により支所等が置かれましたが、教育委員会の全ての業務に対応していない実態があり、「市町村教育委員会までの距離(支所等を含む)」を「市町村教育委員会までの距離」に戻すこと。
③ 「郵便局までの距離(簡易郵便局を含む)」を、集配・貯金などすべての業務を行っている「郵便局までの距離」とすること。
④ 「都道府県庁所在地又はこれに準ずる都市の中心地までの距離」を、「都道府県庁所在地の中心地までの距離」「これに準ずる都市の中心地までの距離」と、それぞれ独立した要素とし、現行の最高基準以上の距離を細分化し、実距離に比例して配点すること。
⑤ 「スーパーマーケットまでの距離」については、大小さまざまな「スーパーマーケット」があり、「大型量販店までの距離」とすること。
 
(2)点数表の見直しについて
 公共交通機関が充実しているかどうかが、都市部と地方の相対的へき地性を示す大きな要因です。1日数回しか止まらないバス停留所も存在しています。そういう現実を勘案して、へき地性を点数に正確に反映させるために、「駅又は停留所までの距離」(陸地用基準)の基準点数、「船着場までの距離」(島用基準) の基準点数を元に戻すこと。
 
(3)付加点数等について
① 学用品等の購入地に係る加点の廃止については、算定の要素にスーパーマーケットを加えたためとしていますが、スーパーマーケットでは学習に必要な学用品を一概に販売しているとは言えず、見直し、「教材教具や教育専門書も購入できる店」とすること。
② 「当該学校が都市近郊にある場合」に減点できる規定を削除するか、また、導入するにしても「当該都道府県教委や人事委員会」が所轄の自治体や教育関係団体からの意見を十分聴取した上で、「減点の具体」について決定することを促す規定を入れること。
 
3.「省令案」等を示して、当該の教職員組合等との交渉・協議の実施を
 
 今回は「概要」を示しただけでのパブリックコメントでしたが、国民の意見を公募して施策に反映させるとのパブリックコメントの趣旨からすれば、昨年全国規模で行った「へき地学校現状調査」結果、それを基にした検討内容、さらには「省令案」そのものを明らかにして実施すべきだったと考えます。今後、それらを明らかにし、当該の教職員組合等と交渉・協議を行うべきであると考えます。

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